ランダム化

post2.jpg臨床研究は研究者とバイアス・交絡因子との戦いである。ランダム化の目的は対象の選択・割付でのバイアスを避け、介入以外の全ての要因を揃えて比較可能な集団を作ることである。我々が直接調べることができる年齢、性別などの要因の他に、遺伝的素因や未知の因子もランダム化することでグループ間がほぼ均一になることが期待できる。
もちろんランダム化に失敗することもあるが、うまくランダム化されれば交絡因子はほぼ断ち切られていると考えて良い。つまるところ、ランダム化とは交絡因子を断つための現時点での最強の技である。
各ランダム化の用語の簡単な解説は以下。

単純ランダム化 (simple randomization)

サイコロをふる要領で患者を介入群とコントロール群に1/2(1:1に割り付けるとして)の確立でどちらかの群に割付ける方法である。現在ではコンピューターで乱数を発生させランダムに割り付ける方法が取られることが多い。単純ランダム化は症例数が少ないと集団の属性と人数に偏りが生じることがある。例えば、10名をコインの裏表で割り付けた場合、介入群に1名、コントロール群に9名というような割付が起きてしまうことがあり、2群がほぼ同数になることは保証されない。また偶然に年齢や属性に偏りがうまれてしまうこともある。

ブロックランダム化 (block randomization)

単純ランダム化の割付の人数の偏りを解消する方法がブロックランダム化である。予め人数を決めたブロックをつくり、その中でランダムに割り付ける方法である。例えば、介入群をA、コントロール群をBとして、2名の患者をA,Bに割り付ける組み合わせはAA、AB、BA、BBの4通りである。単純ランダム化でAA、BBという割付をすると人数の偏りができてしまうので、ブロックランダム化ではAB、BAブロックに患者を割り付けて行くことで人数の偏りが解消される。つまりブロックランダム化の利点は2群間の参加者数をほぼ同数にできることである。一方で欠点は何かの表紙に最初の割付がわかってしまった場合に、自動的に次の割付もわかってしまう点である。この欠点を解消するために、同じブロックサイズを使い続けるのではなく、ブロックサイズを大きくするか、ブロックサイズを2と4からランダムに選ぶ方法か複数のブロックサイズをとりまぜて使用する方法がとられる。

層別ランダム化 (stratified randomization)

層別ランダム化とはランダム化前に予め性別や疾患の進行度など両群で違いを生じさせたくない因子ごとに患者をわけておき、ランダム割付を行う方法である。

適応的ランダム化 (adaptive randomization)

上記のランダム化割付途中に介入群とコントロール群の人数に大きく差ができてしまった場合に次の組入患者を少ない方の群に割り付ける方法。途中の割り付け結果に適応しながら次の割付をきめるため適応的ランダム化と言われる。

クラスターランダム化 (cluster randomization)

介入を行う単位が個人ではなく、集団を対象としている場合(教育効果、ワクチンなど)にグループや地域といった塊(クラスター)を一つの単位としてランダム化してく方法。

【引用】
臨床研究のデザイン Designing Clinical Research, 4th Edition 訳:木原雅子、木原正博
臨床研究の道標 上・下 福原俊一
人間栄養学講座 連載 ランダム化臨床試験をする前に【第4回 】 ランダム化の方法 佐藤俊哉 栄養学雑誌 Vol.65 No 5 225-260 (2007)


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このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学