ショック患者のMAPの目標値は高いほうが良いか、低いほうが良いか【IPDメタ解析】

【Article】
Lamontagne F, Day AG, Meade MO, et al. Pooled analysis of higher versus lower blood pressure targets for vasopressor therapy septic and vasodilatory shock. Intensive Care Med. 2018 Jan;44(1):12-21. PMID: 29260272.

【Reviewer】Ryohey Yamamoto

【目的】ガイドラインではショックの血圧ターゲットとしてMAP65mmHgが推奨されているが、慢性高血圧、動脈硬化がある患者では高めが良いという報告もある。IPD-meta-analysisによりMAPのターゲットは高めが良いのか低めが良いのかを検証する
P:成人のショック患者
E:昇圧剤で高いMAPを保つこと
C:昇圧剤で低いMAPを保つこと
O:28日死亡

【デザイン】IPDメタ解析

【検索方法】
データベース:MEDLINE (from 1946 to November 2017), EMBASE (from 1980 to November 2017)、Cochrane Central Register of Controlled Trials (from 2005 to 2017)、ATS、SCCM、ESICM、ISICEMの学会抄録
検索後134_2017_5016_MOESM1_ESM.docx
英語以外の言語:あり
期間:〜2017.11
PRISMAガイドライン:従う
PROSPERO:事前登録あり April 8, 2016 CRD42016037482

【対象】
検索された論文のデザイン:RCT、クロスオーバーを除く、
組入基準:ショック患者で高いMAPと低いMAPを比較したRCT
除外基準:クロスオーバーデザイン、慣例的できない昇圧剤、介入時間が24時間未満

【評価】
組入者: 二人の独立した評価者が評価
Risk Of Bias評価:コクランに従う

【N】894

【主要評価項目】28日死亡

【副次評価項目】90日死亡と臓器障害の複合
5日以内の不整脈、MI、四肢・腸管虚血、出血
輸液量
NOAの投与量

【解析】
感度解析:あり

【結果】
8343の文献があり、57の文献をレビューし組入RCTは2つであった。1つ進行中の研究があった。
主要評価項目:28日死亡:36% vs 33% OR 1.15 (95% CI 0.87-1.52). 
年齢、院内死亡、うっ血性心不全、慢性高血圧で調整しても有意差なしadjusted OR = 1.19, 95% CI 0.88-1.62, p = 0.26
副次評価項目:90日死亡 43% vs 41% OR = 1.10, 95% CI 0.84-1.44, p = 0.47
サブグループ解析

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副作用:不整脈が増える

【結論】
高めでも低めでも28日死亡に差はないが、6時間以上昇圧剤を使用した患者でMAP≦65mmHgを目標とすると死亡が上昇するかもしれない。

【Implication】
IPDを利用したMAでは高いMAPでは効果はなさそう。対象患者はどちらの研究も敗血症が対象である。高めMAPは臓器還流を保つことで生理学的メリットが期待され、SEPSISPAMでは高血圧患者でのメリットが報告されたが、IPDメタ解析ではその効果は見られなかった。不整脈や負のアウトカム(死亡)が増える可能性を考えると患者全体としても推奨されない。またOVATION研究では高齢者のサブグループで高いMAP群で死亡率上昇が報告されており、基本的には65mmHgを目指すのが良いだろう。
話は別だがEBMの大家のGuyatt GHってこういうところにちょいちょい出てくるなあ。

【本文サイト】https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00134-017-5016-5


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このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学