CORTICUS
【論文】
Sprung CL, Annane D, Keh D, et al; CORTICUS Study Group. Hydrocortisone therapy for patients with septic shock. N Engl J Med. 2008 Jan 10;358(2):111-24. doi: 10.1056/NEJMoa071366. PubMed PMID: 18184957.
【Reviewer】山本良平
【Research Question】
成人のseptic shock患者において低用量ハイドロコルチゾンは28日死亡を改善させるか
【わかっていること】
- 敗血症にステロイド投与は有効か?の途中まで
【わかっていないこと】
- Annane 2002
- 成人のseptic shock患者において低用量ハイドロコルチゾンは28日死亡を改善させるか
【仮説】
- 成人のseptic shock患者において低用量ハイドロコルチゾンは28日死亡を改善させる
【PICO】
P:成人のSeptic shock患者
Inclusion Criteria:
- 18歳以上ICU患者
- 72時間以内の感染が臨床的に証明されている(無菌な体液から多核球が検出、培養もしくはグラム染色で検出、喀痰、尿、無菌である体液から微生物が検出、感染のフォーカスが視覚的にわかる(Free airがあり腸管穿孔とわかる、膿が創部からでるなど)、CAPとして治療されている、蜂窩織炎として治療されているなど)
- 24時間でSIRSを2つ以上満たす
- 72時間以内にショックを満たす。ショックは以下のAとB両方を満たす
A:十分な輸液にもかかわらずsBP<90mmHgかベースラインからsBPが50mmHg以上低下もしくは昇圧剤を1時間以上使用してsBP≧90mmHgを維持
B:以下の一つ以上の低灌流所見がある
・持続する無尿(0.5ml/kg>が一時間以上)
・代謝性アシドーシス(pH<7.3 or ABGでBE≧5.0mmol/l or Lac> 2mmol/l)
・血小板減少(Plt≦100000)
・意識障害(GCS<14) - IC取得
Exclusion Criteria:
- 妊婦
- 18歳未満
- 併存疾患の予後が3ヶ月未満
- 72時間以内にCPRされた
- 4週間以内の薬剤による免疫抑制、化学療法、放射線療法を含む
- 6ヶ月以上の慢性的ステロイド投与を受けているもしくは4週間以内にステロイド投与を受けた
- HIV陽性
- withhold or withdraw患者
- 進行がんで予後が<3ヶ月
- 急性心筋梗塞もしくはPE
- 他の研究の薬剤を30日以内にうけた
- 24時間以内に死亡が予測
- ICUに2ヶ月より多く滞在
I:ハイドロコルチゾン50mg6時間毎IV、6日目から減量し12日に中止
C:プラセボ投与
O:28日死亡
【期間】2002年3月〜2005年11月
【場所】52施設ICU
【デザイン】多施設二重盲検プラセボ対照群RCT
- 事前プロトコルの有無:あり ClinicalTrials.gov number, NCT00147004
- ランダム化の方法:コンピューターによるランダム化、ブロックランダム化、施設毎の層別ランダム化
- 隠蔽化の有無:あり
- マスキングの有無と対象者:すべてマスキング
【N】499
【介入】ハイドロコルチゾン50mg6時間毎IVを5日間、6日目から減量し12日に中止
【対象】プラセボ投与
【主要評価項目】ノンレスポンダーでの28日死亡
【副次評価項目】レスポンダーでの28日死亡、ICU、院内、1年死亡、ICU・入院期間
【解析】
- サンプルサイズ計算:40%がノンレスポンダーと仮定して、この集団の28日死亡が40%、ARR10%でα5%、検出力80%で各群400人と算出
- ITTの有無:あり
- 中間解析:2回
【結果】
- フローダイアグラムの解釈(フォローアップ、除外):500人がランダム化、252人、が介入群、248人がプラセボ群に割付され、1人が同意撤回。フォローは99.8%
- 集団特性(内的妥当性・外的妥当性)
・63歳、男性66%程度の集団。SAPS2は全体で49程度、ノンレスポンダーで49.0〜50.7程度。NOAが90%以上使用され、量は0.4〜0.5γ使用されていた。ノンレスポンダーが233人(46.7%)で介入群に125人、プラセボ群に108人いた。エトミデートを20.3%、18.1%が投与されていた。
・ランダム化後にノンレスポンダーにわけているためランダム化の前提はくずれる。 - アドヒアランス:90%
- 主要評価項目
・28日死亡:ハイドロコルチゾン群 39.2% vs. プラセボ群 36.1% ARR 3.1% (95% C.I. -9.5% to 15.7%) p=0.69 - 副次評価項目
・レスポンダーでの28日死亡:28.8% vs. 28.7%, P=1.0
・全体の28日死亡:34.3% vs. 31.5%, P=0.51
・ショックからの離脱:
- ノンレスポンダー:3.9 days (95% CI, 3.0 to 5.2) vs 6.0 days (95% CI, 4.9 to 9.0)
- レスポンダー:2.8 days (95% CI, 2.1 to 3.3) vs 5.8 days (95% CI, 5.2 to 6.9)
- 全体:3.3 days (95% CI, 2.9 to 3.9) vs 5.8 days (95% CI, 5.2 to 6.9)
- 感染:33% vs. 26%, RR 1.27 (95% C.I. 0.96-1.68)
- 術後リーク:2% vs 2% RR0.99 (95% C.I 0.25-3.92)
- GI bleeding: 6% vs 6%
【Strength・Limitation】
- Strength
- RCT
- ランダム化、マスキング、隠蔽化を行えていている
- Limitation
・検出力不足。資金不足で途中で終了した
・50%で死亡を見積もったが38%しか死亡していない
【論文の結論】
Septic shockとして一般的な集団にハイドロコルチゾンを投与しても28日死亡を改善しないがショック離脱が早くなる。
- 飛躍していないか
飛躍していない
【批判的吟味】
<内的妥当性>
- βエラーの可能性が高い
<外的妥当性>
- コルチコトロピン試験を行わなければならない、この解釈も難しい
- ステロイド投与開始までの時間が長い(すでに敗血症が軽快している可能性やすでに手遅れになっている可能性がある)
【Implication】
Annane 2002とは異なる結果となったRCT。ベースの患者の重症度が低く、2002年の試験と比べてもコントロール群の死亡率が低いことが有意差がでなかったことの一つとして考えられている。ハイドロコルチゾンの効果は軽症群では差が出づらいのかもしれない。が、そもそも検出力不足である。3年で10%しか患者をリクルートできず、結局499/800人の時点で、資金不足のため終了している。Underpowerでステロイドの効果があったとしても検出はできない。このためこの研究の結果からどうのこうの言うことができないが一貫してショックの離脱をはやめるというのはありそうであるが。
というかISFで会うSprung先生がCORTICUSの著者でかつ、資金繰りで断念していたとは...。どおりでADRENAL発表の際に研究資金がー!とか研究グループがいっていたわけか。
【本文サイト】
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa071366
【もっとひといき】
・Annnae 2002
・敗血症にステロイド投与は有効か?
・ADRENAL 工事中
【引用】
The Bottom line http://www.thebottomline.org.uk/summaries/icm/corticus/
このサイトの監修者
亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗
【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学