Annane 2002

post10.jpg【論文】
Effect of Treatment With Low Dose of Hydrocortisone and Fludrocortisone on Mortality in Patients With Septic Shock

【Reviewer】山本良平

【Research Question】
Septic shock患者で低用量コルチコステロイドは28日死亡を改善するか

【わかっていること】

【わかっていないこと】

  • 低用量のコルチコステロイドでseptic shockの予後がよくなるか

【仮説/目的】
低用量のコルチコステロイドはseptic shock患者の28日死亡を改善させる

【PICO】
P:ICUに入室したSeptic shock患者
Inclusion Criteria:

  1. 感染が証明もしくは強く疑われる(血液を除く無菌の体液から分離、グラム染色で見つかる、臨書的所見がある、排膿する創部、肺炎、全身感染症など)
  2. BT38.3度もしくは35.6度以下
  3. HR>90
  4. 十分な輸液にもかかわらず、昇圧剤が5mcg/hrより多く要し、1時間以上sBP<90mmHgが続く
  5. 尿量が0.5ml/kgが一時間以上もしくはP/F比が280mmHgを下回る
  6. Lac>2mmol/l
  7. 人工呼吸を要する

上記すべてを満たし、書面で本人もしくは代理人から同意がえられ、ショックから3時間以内のランダム化
途中でLacの基準をなくし、ショックから3〜8時間に基準を変更
Exclusion Criteria
妊娠、心筋梗塞、PE、進行がん、AIDS、コルチコステロイドの禁忌または相対的禁忌
途中でエトミデート投与患者を除外することに変更
I:8時間以内にハイドロコルチゾン50mgを6時間毎IVとフルドロコルチゾン50mg/day POを7日間投与
C:プラセボ投与
O:ノンレスポンダー患者での28日の生存の分布

【期間】1995年10月〜1999年2月

【場所】フランス19ICU

【デザイン】多施設二重盲検プラセボ対照群RCT

  • 事前プロトコルの有無:なし
  • ランダム化の方法:コンピューターによるランダム化、センター毎の層別化、ブロックランダム化(サイズ4)
  • 隠蔽化の有無:中央割付で隠蔽化あり
  • マスキングの有無と対象者
    すべてマスキング
    最後にマスキングされていたかを患者に質問紙で確認

【N】299

【介入】100mgのハイドロコルチゾンを5%Glu2mlに溶解し6時間毎に50mgBolus投与と50mcgのフルドロコルチゾンをNGから投与を7日間

【対象】プラセボ投与
<両群共通>
ランダム化後にコルチコトロピン試験が行われ、≦9mag/dlをノンレスポンダーと定義

【主要評価項目】ノンレスポンダー患者での28日の生存の分布

【副次評価項目】レスポンダーでの28日生存の分布、28日、ICU、入院、一年後死亡、28日間での昇圧剤までの終了期間、有害事象

【解析】

  • サンプルサイズ計算:片側検定でα0.05、ノンレスポンダーの28日死亡を20%の差を90%検出できるように算出し270人。
  • ITTの有無:あり
  • 中間解析:2回計画、O'Brien and Fleming stopping boundaryに則って中止を計画

【結果】

  • フローダイアグラムの解釈(フォローアップ、除外):1326人がスクリーニングされ、1026人が除外。理由のわからない除外はない。
    149人がプラセボ、151人がステロイド群に割り付けられ、脱落なし。(辞退が一名いた)
  • 集団特性(内的妥当性・外的妥当性)
    60歳程度の年齢で7割り程度が男性。SAPS260程度、昇圧剤はほとんどがDOAを使用されている。
  • アドヒアランス
  • 主要評価項目:ノンレスポンダー群で28日死亡が改善:HR 0.67; 95% C.I. 0.47-0.95, P=0.02, NNT 7 (95% C.I. 4-49)
  • 副次評価項目
    レスポンダーの28日生存の分布:有意差なし
    ノンレスポンダーでの28日死亡:73 (63%) vs. 60 (53%), P=0.04
    レスポンダーでの28日死亡:18 (53%) vs. 22 (61%), P=0.96
    全体:91 (61%) vs. 82 (55%) 有意差なし
    昇圧剤終了までの期間
    ノンレスポンダー:10 days vs. 7 days, P=0.001
    有害事象:33 vs 32で有意差なし

【Strength・Limitation】

  • Strength
    ・ランダム化
    ・マスキング
    ・多施設
    ・抗菌薬の適切性を評価
  • Limitation
    ・主要評価項目が生存の分布
    ・ノンレスポンダーでもベースラインの調整をして初めて28日死亡に有意差がある
    ・24%がエトミデートの投与を受けている
    ・抗菌薬投与がプラセボで6時間、介入群で7.1時間と遅い
    ・1326人スクリーニングして300人のみの組み入れ

【論文の結論】
カテコラミンを要する敗血症性ショックにおいて、特に相対的副腎不全がある患者では7日間のハイドロコルチゾンとフルドロコルチゾン投与は安全で短期・長期の予後を改善する。

  • 飛躍していないか
    やや飛躍

【批判的吟味】
<内的妥当性>

  • ランダム化後にノンレスポンダーとレスポンダーを分けているため、ランダム化の前提が崩れている可能性がある
  • 先行研究から得られた回帰モデルを用いて調整死亡率分析をおこなったことでより低いP値を得ている
  • ノンレスポンダーにおける28日死亡に対する未調整での結果のP値は0.11
  • 24%の患者でエトミデート(副腎ステロイド複合体阻害薬)投与されている
  • フルドロコルチゾンが交絡因子である可能性、対照群で抗菌薬投与の遅れがある

<外的妥当性>

  • DOAをメインに使用する集団
  • 2002年の敗血症だとまだICUサービスが発展していない

【Implication】
AnnaneのRCTでは劇的に死亡率を改善しているが、上記のような様々Limitationがあり、ステロイドを使えば患者の予後がよくなるとは言えない。しかし、死亡を改善しうる仮説であり、合併症の増加も微々たるものなので試す価値がある。
それとは別にいま読み直すと結構デザインがめちゃくちゃ。この数十年でRCTのデザインや事前のルールなど適正化されてきたように思う。

【本文サイト】
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/195197

【もっとひといき】
敗血症にステロイド投与は有効か?

【引用】


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このサイトの監修者

亀田総合病院
集中治療科部長 林 淑朗

【専門分野】
集中治療医学、麻酔科学