microbiology round

Burkholderia gladioliという聞いたこともない細菌が血液培養から発育したため、2024.2.22のMicrobiology RoundではBurkholderia属について学びを深めました。

【歴史と微生物に関して】
βプロテオバクテリア網バークホリデリア目バークホリデリア科バークホリデリア属
バークホリデリア属は現在36菌種が存在
・Burkholderia cepacia complexは好気性グラム陰性桿菌であり、土壌、水、植物等の自然環境や食品中に存在する。多くのBurkholderia cepacia complexはオキシダーゼ陽性でカタラーゼ陽性であり、運動性を持つ。種ごとに生息環境に違いがあり、B . cepacia、B. cenocepacia、B. vietnamiensis、B. ambifariaは、植物に生息する代表的な種である。大多数の日和見病原体とは異なり、Burkholderia cepacia complex のメンバーは共生保菌する傾向がなく、感染は通常、病院環境または環境から直接感染する。Burkholderia cepacia complexは24の種で構成されているが嚢胞性線維症(CF)患者ではB. cenocepaciaとB. multivoransの頻度が高く、CF以外の患者ではBurkholderia cepaciaの頻度が最も高い。ネブライザー、水、クロルヘキシジン等の汚染を原因とする院内感染が発生している。CFや慢性肉芽腫症の患者など、免疫力が低下している人は特に感染しやすい。
※ブドウ糖非発酵菌:発酵とは微生物による糖質の嫌気分解のことであり、嫌気条件下でブドウ糖を分解できない菌のこと。

【臨床症状】
①嚢胞性線維症患者における呼吸器感染症
・B. cenocepaciaとB. multivoransはCF患者の肺から最も頻繁に分離されるBurkholderia属の種である。緑膿菌と比較して、Burkholderia cepacia complex感染は肺機能の急速な低下と関連している。CF患者における Burkholderia cepacia complex 感染に関連する特徴的な臨床病型として、cepacia syndromeと呼ばれる菌血症を伴う重篤で急速に進行する壊死性肺炎が報告されている
②肺移植患者の感染症
・移植前にレシピエントの肺にBurkholderia cepacia complexが定着していると、移植後の死亡リスクが非常に高いことが示されている。術前にBurkholderia cepacia complexが定着している患者では肺移植術後に同菌による敗血症をきたしうると報告されており、特にB cenocepaciaで死亡率が上がることが示されている。カナダの移植レシピエントでは、移植後1年以内の死亡のハザード比は、Burkholderia cepacia complexが定着しているレシピエントでは定着のないレシピエントと比較して6.29であった。
③非嚢胞性線維症患者の菌血症と肺炎
・ヘパリンフラッシュや調剤薬局で作られた溶液の汚染を伴う院内感染の発生が報告されている。非CF患者に血流感染が発生すると、肺炎を伴うことがよくある。ネブライザー治療を受けている患者においても肺炎が見られることがある。
④その他の稀な感染症
・皮膚および関節のBurkholderia cepacia complexの感染症は、症例報告されている。火傷病棟で滅菌されていない皮膚保湿剤を使用された患者で確認されている。がん患者や免疫抑制患者では、播種性皮膚病変が見られる。免疫正常者で壊死性筋膜炎が報告されている。血行性の化膿性関節炎や尿道カテーテル使用患者における尿路感染症、腎移植後感染症も報告されている。

【Treatment】
・Burkholderia cepacia complexは、多数の抗菌薬に耐性を示す。耐性のメカニズムには、排出ポンプの発現、抗菌薬の分解または修飾酵素、膜構造の変化が含まれる。カルバペネム、ST合剤、ミノサイクリン、クロラムフェニコールは有効であることが多いが最終的な抗菌薬の選択は抗菌薬感受性試験の結果によって決まる。CF患者のBurkholderia cepacia complex株2621株を対象とした大規模研究では、ミノサイクリン(38%)、メロペネム(26%)、セフタジジム(23%)が最も活性が高いと報告された。(table1)セフタジジムアビタバクタムやセフトロザンタゾバクタムは感受性が良好であるとされている。

【参考文献】
1)Mandell, douglas, & bennett's principles & practice of infectious diseases, 9th ed.
2) Antimicrob agents chemother. 2007 mar;51(3):1085-8.
3)J heart lung transplant. 2010 dec;29(12):1395-404.
4)European annals of otorhinolaryngology, head and neck diseases volume 136, issue 1, february 2019, pages 55-56
5)New microbes and new infections volume 2, issue 6, november 2014, pages 175-176
6)臨床検査 vol. 53 no. 11 2009 年 増刊号

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育