microbiology round

2024.2.15のMicrobiology roundではCandida tropicalisについて取り上げ、Candida全体における臨床上問題となる感染症や診断検査について学びを深めましたので、ご一読いただけますと幸いです。

1. 概要
Candida属菌は、日和見感染や医療関連感染の原因となる病原体である。ヒトの疾患の原因となるCandida属菌は少なくとも15種あるが、侵襲性疾患の90%以上は、Candida albicans、Candida glabrata、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida kruseiの5菌種によって引き起こされる1)。これらの菌はそれぞれ特有の病原性、抗真菌薬感受性および疫学を有する。侵襲性カンジダ症の他には表在性カンジダ症があり、特に口腔咽頭、食道、膣を含む感染症がある。

2. 診断検査
侵襲性カンジダ症を診断するための血液培養の感度は50%程度2)であり、培養の検出限界はPCR の検出限界以下である。活動性のカンジダ血流感染症の大部分は、血液培養が陽性となる。一方で、極めて低レベル(血液中のCandida数が少ない)のカンジダ血症、間欠的なカンジダ血症などでは、血液培養が陰性となることがある。
カンジダ抗原および抗カンジダ抗体の検出は、米国よりも欧州で広く利用されている。最もよく研究されている検査はマンナン抗原/抗マンナン抗体の組み合わせアッセイであり、14件の研究を対象としたメタアナライシスでは、マンナン抗原と抗マンナン抗体それぞれの侵襲性カンジダ症の診断の感度/特異度は、それぞれ58%/93%と59%/83%であった3)
β-D-グルカンは、Candida種、Aspergillus種、Pneumocystis jiroveci、および他の真菌の細胞壁構成成分であり、侵襲性真菌感染症の診断のために利用される。β-D-グルカン陽性は、侵襲性カンジダ症に特異的ではなく、侵襲性真菌感染症の可能性を示唆している。β-D-グルカンの問題点は、特異性の低さと偽陽性の可能性である。対象集団によっては偽陽性が多く、健常対照者では偽陽性の結果はまれであるが、ICU患者では多い 4)
β-D-グルカンの偽陽性の原因4):グラム陽性菌血症やグラム陰性菌血症などの他の全身性感染症、特定の抗菌薬、血液透析、真菌のコロナイゼーション、アルブミンや免疫グロブリンの投与、β-Dグルカンを含む手術用ガーゼなどの使用、粘膜炎などの消化管粘膜の障害など。
PCR アッセイは、侵襲性カンジダ症の診断と抗真菌療法の開始までの時間を短縮する5, 6)。最近のメタアナリシスにおける侵襲性カンジダ症の疑いに対する PCR の統合された感度と特異度は、それぞれ 95% と 92% であった5)。侵襲性カンジダ症の可能性が高い場合、PCR と血液培養の感度はそれぞれ 85% と 38% であった。ただし、IDSAのガイドライン1)では標準化された方法論とアッセイ性能の多施設検証が欠如している点が指摘されており、臨床使用のためには課題がある状況である。

3. 参考文献
1) Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by IDSA.
2) Clin Infect Dis 2013; 56:1284–92.
3) Crit Care2010; 14:R222.
4) Clin Chest Med2009; 30:367–77, viii.
5) J Clin Microbiol2011; 49:665–70.
6) Clin Infect Dis2008; 46:890–6.

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育