microbiology round

2023.10.12のMicrobiology roundはHafnia alvei について取り上げました。この微生物に関してreview文献を読んだことがなかったので、非常に勉強になりました。では僕は上手く発音できないHafnia alvei についてまとめです。

【歴史・微生物学的特徴】
Hafnia:デンマーク・コペンハーゲン市の古い名称Havn
alvei:ラテン語で蜂の巣alveus 1)
最初は蜂蜜やミツバチの腸から発見されたことに由来する。腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌、通性嫌気性菌。運動性があり、乳糖を発酵しない。1912年にBacillus asiaticusから始まり、繰り返し名称が変更されEnterobacter alvei、 Enterobacter aerogenes subsp. hafniae、Enterobacter hafniaeなどを経て1976年にSteigerwaltらによりHafnia属として正式に独立した2)。Hafnia alveiは元々Hafnia属で唯一の菌株だったが、16S-rRNA遺伝子解析の進歩に伴い新種として2010年にH. paralveiが2菌種目として発見されている3)。H. alveiとH. paralveiの違いははっきりわかっていないが、H. alveiのほうが毒性が高いとされる。人や多くの動物(哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類、昆虫)の腸管内から検出され、加工食品(肉や乳製品)からも検出されている4)

【臨床的特徴】
一般的には呼吸器感染症、消化管感染症、菌血症を起こすとされ、他には髄膜炎や院内創傷感染症、眼内炎、臀部膿瘍などの報告がある。またVero細胞に対して変性を起こすShiga toxinに似た毒性株があり、この毒性株による消化管感染症のアウトブレイクの報告がある1)。H. alvei自体は様々な部位から検出されることがあるが、H. alvei単独での感染症を起こすことは稀である4)

【治療】
感受性パターンはEnterobacter属に似ている。染色体上に誘導性AmpCβラクタマーゼがコードされており、脱抑制となる平均変異率は3 × 10-8とE. cloacae complex、E. aerogenes、C. freundii complexらと同等5)。AMPC、AMPC/CVA、ABPC/SBT、狭域スペクトラムのセファロスポリン、テトラサイクリン、AZM、FOMに対して自然耐性または中程度感性を示す4)。治療は基本的に感受性結果に従う。これまで高確率のコリスチン耐性や、様々な耐性パターンが報告されている2)

【参考文献】
1) Clin Microbiol Rev. 2006 Jan;19(1):12-8.
2) Diagn Microbiol Infect Dis. 2005 Mar;51(3):151-63.
3) Int J Syst Evol Microbiol. 2010 Aug;60(Pt 8):1725-1728.
4) Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases
5) J Antimicrob Chemother. 2018 Jun 1;73(6):1530-1536.

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育