microbiology round

1年に1回は見たい、パステルカラーが美しいカンジダ戦隊。2023.9.7のMicrobiology roundはターコイズブルーのコロニーを​することで有名なCandida albicansについて取り上げました。

Candida albicans
由来:Candida=純白色 albicans=帯白色の

【総論】
カンジダには150を超える種があるが、人間の病原菌と見なされるのはごくわずかで、C. albicans、C. guilliermondii、C. krusei、C. parapsilosis、C. tropicalis、C. pseudotropicalis、C. lusitaniae、C. dubliniensis、C. glabrataである。1839年に口腔内病変から発見された。1840年にはカンジダによる心内膜炎が報告された。2000年以降(手術、化学療法、抗菌薬、血管留置カテーテルの普及により)カンジダ感染症は急増し、またnon-albicansの発症が著明に増えた。
▷Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, Ninth Edition

【微生物学的特徴】
酵母様真菌、単細胞で存在。4-6μm の薄壁をもつ卵型の細胞。出芽によって繁殖する。Anamorph(無性生殖のみ)。サブローデキストロース寒天培地(SDA)、ポテトデキストロース寒天培地(PDA)、クロモアガーCandida培地で培養。滑らかでクリーミーな白色光沢のあるコロニーを形成する。PDA培地とSDA培地上のコロニー性状のみでは菌種の推定は困難であるが、発色合成色素を用いたクロモアガー・カンジダ培地を用いれば、主要なCandida属については大まかな菌種推定が可能である。出芽した細胞が重なり合い、仮性菌糸を形成する。血液培養にはおよそ25-30℃で48時間必要だが、C. glabtrataはさらに1日長くかかる。Candida albicansは好気ボトルから検出されることが多いが、C. glabarataは嫌気ボトルが先に陽性になることがしばしばある。
▷微生物プラチナアトラス/J Antimicrob Chemother 2013; 68: 2839‒2841

【C. dubliniensisとの鑑別】
C. albicansとC. dubliniensis は同様の性状を示すことから、形態学的・生化学的性状のみでは鑑別困難である。クロモアガーカンジダ培地で同様の色調を呈するが、C. albicansは明るい緑、C. dubliniensisは濃い緑の色調を呈する。また、どちらも発芽管形成試験陽性で厚膜胞子を有するため鑑別は難しいが、C. dubliniensisは菌糸の先端に複数の厚膜胞子を形成する。
▷Sugita T. [Photo quiz: Basic mycology]. Med Mycol J. 2013;54(4):321-2. Japanese. doi: 10.3314/mmj.54.321. PMID: 24292132.

【臨床的特徴】
C. albicansは、土壌、動物、病院環境、食品などから検出。ヒトの正常な常在菌であり、 皮膚、消化管、痰、気管支肺胞洗浄液、女性生殖器、膀胱留置カテーテル使用時の尿などにも見られる。Candida属が検査室でコンタミすることは稀。カンジダ感染症には、血流感染をはじめ、関節炎、骨髄炎、眼内炎、心筋炎、心膜炎、CIED感染、髄膜炎、腹膜炎、筋炎などがある。通常、C. albicansが最も病原性が強く、多くのカンジダ症の原因になる。
▷Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, Ninth Edition

【治療】
基本アゾール効く。かつてはCandidaのFLCZのMICは8であったが、現在はC. albicansについては2であり、C. glabrataについてはFLCZ, ITCZ, VRCZ, PSCZのbreakpointの設定がない。Candidaの抗真菌薬感受性は、菌種が分かれば、一般的に推測はできる。C. albicansの薬剤耐性は少ない。しかしながら個別の菌種は必ずしも一般的な感受性パターンを取らず、近年のstudyでは、アゾール耐性のC. glabrataが報告されている。またC. glabrataでは、エキノキャンディンでも同様のtrend(耐性)が報告されている他のCandidaの菌種では、感受性検査の価値は明らかでないが、C. tropicalisとC. parapsilosisの耐性が、抗真菌薬の使用が多い3次医療機関で報告されている。
▷Clinical Infectious Diseases, Volume 62, Issue 4, 15 February 2016, Pages e1–e50,

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育