microbiology round

5/18のMicrobiology roundは、急性リンパ球性白血病に対し造血幹細胞移植後、数年経過した患者に起きたMycobacterium chelonaeによる菌血症の症例について取り上げました。

【総論】
M. chelonaeは、1903年にFreidmannが亀から初めて分離し、"turtle tubercle bacillus “と呼称した。(※文献によって発見者と年度に相違あり)非結核性抗酸菌に属し、Runyon分類では、クラスIVに分類されるRapid growing mycobacterium(RGM)である。環境中に広く分布しており、水道管の中でバイオフィルムを作り、水道水から検出されることもある。

【名前の由来】
chelonae=亀(che.lo’nae, a tortoise, of a tortoise)

【微生物学的特徴】
Rapid growing mycobacteriumの名前の通り、7日以内に培地上に発育してくる。小川培地やミドルブルック7H11培地で優位に発育し、コロニー性状はS(smooth)型、R(rough)型、混合型を示し、また色調は黄色〜白色と様々である(添付画像参照)。本菌は特徴的な形態に乏しいため、他の迅速発育菌群とコロニー性状や染色像で区別するのは困難である。5%ヒツジ血液寒天培地、ミューラーヒントン寒天培地に発育可能で5日間ほど培養すると微小なコロニーの発育が確認できる。28〜30℃の低温で増殖するのも特徴である。以前は分離培養・生化学的性状によりなされてきたが、近年はMALDI-TOF MSで同定を行うことが可能になった。

【臨床的特徴】
M. chelonaeの感染症は皮膚軟部組織の感染が多く、主に免疫抑制状態の患者、特にステロイドを長期投与されている患者で見られる。関節リウマチやSLEなどの自己免疫疾患は、しばしば素因となる。LASIK後の角膜炎や、タトゥー後のM. chelonaeの集団感染が発生している。他には骨や関節の感染症、カテーテル血流感染症、播種性感染症(特に皮膚病変)を起こす。

【薬剤感受性・治療】
M. chelonaeは、アミカシン、イミペネム、チゲサイクリン、トブラマイシン、クラリスロマイシン、場合によってはリネゾリド、モキシフロキサシン、ドキシサイクリンに活性を有する。
患者背景、感染巣、重症度によって抗菌薬のレジメンおよび治療期間は異なり、非結核性抗酸菌症の専門家に相談しながら治療を行っていく。

【参考文献】
https://lpsn.dsmz.de/species/mycobacteroides-chelonae
Akram SM, Rathish B, Saleh D. Mycobacterium Chelonae. 2023 Feb 25. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023 Jan–. PMID: 28613557.
Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 252, 3049-3058.e3
https://www.uptodate.com/contents/microbiology-of-nontuberculous-mycobacteria?search=NTM&topicRef=5347&source=see_link
https://www.uptodate.com/contents/rapidly-growing-mycobacterial-infections-mycobacteria-abscessus-chelonae-and-fortuitum?search=NTM&source=search_result&selectedTitle=12~150&usage_type=default&display_rank=12

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育