microbiology round

5/25のmicrobiology roundはEnterococcus gallinarumについて取り上げました。
悪性胆道狭窄を背景とした急性胆管炎とそれに伴うE. gallinarum菌血症の症例でした。血液培養が2セット中1セット、嫌気ボトル1本からE. gallinarumが分離されました。血液培養のグラム染色塗抹では短連鎖状のグラム陽性球菌が観察され、塗抹上の所見からEnterococus属やStreptococcus属(特にS. anginosus group)の菌を想定しました。分離は5%ヒツジ血液寒天培地とチョコレート寒天培地を用いて、好気と炭酸ガス条件で35℃、24時間行い、円形灰白色コロニーが発育し、MALDI TOF MSでE. gallinarum(A, スコア2.17)と同定されました。

【名前の由来、歴史】
Enteron:消化管 coccus:粒、木の実 gallina:雌鳥
E. gallinarumは1978年に鶏から分離された。

【微生物学的特徴】

  • E. gallinarumはカタラーゼ陰性、通性嫌気性のグラム陽性レンサ球菌で、グラム染色ではグラム陽性球菌の形態、多くはペアか短連鎖状の配列を示す。
  • 血液寒天培地上では円形でなめらか、全体が均一なコロニーを形成する。
  • Enterococus属はマンニット、ソルビット、ソルボース、アルギニンの生化学性状に基づいてグループⅠ-Ⅲに大別され、E. gallinarumはグループⅡに分類される。
  • E. gallinarumとE. casseliflavusは運動性を示す。

【臨床像】

  • 尿路感染症、菌血症、感染性心内膜炎、熱傷や手術部位感染、腹腔内、胆道系感染、カテーテルやデバイス感染を起こす。
  • ヒトから分離される腸球菌はE. faeclais(49%)、E. faecium(30%)、E. casseliflavus(9%)、E. raffinosus(3.2%)、E. gallinarum(2.7%)という割合と報告されている。
    J Infect Chemo mother. 2017 Jun;23(6):390-393
  • E. gallinarum菌血症は70%で背景に悪性腫瘍が存在し、エントリーの73%が胆道系であった。
    また45-51%で複数菌感染であった。
    Clin Infect Dis. 2004 Jan 1;38(1)53-61.
    Clin Infect Dis. 2001 Jun 1;32(11):1540-6.

【感受性、治療】

  • VREは9種類のグリコペプチド耐性型が知られており特にVanA、VanB、VanC phenotypeが知られている。
    Van A phenotype:vanA 遺伝子による高度のバンコマイシンとテイコプラニン耐性
    Van B phenotype:vanB 遺伝子による中程度-高度のバンコマイシンのみに対する耐性
    Van C phenotype:vanC 遺伝子による低レベルのバンコマイシン耐性
  • Enterococus属のバンコマイシンの薬剤感受性を測定する場合は耐性を正確に検出するため24時間で判定する必要がある。
  • E. gallinarumはE. casseliflavusと同様に染色体上にVanC遺伝子を有しておりバンコマイシンに自然耐性のため、バンコマイシンは使用しない。感受性があれば(ほぼ感受性がある)、アミノペニシリン(アンピシリン、アモキシシリン)が第一選択である。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育