第3回亀田感染症セミナーin東京での質問への回答(講義2)

「第3回亀田感染症セミナーin東京」で頂いた質問への回答です。たくさんの質問をありがとうございます。

講義2:院内の発熱

Q1:CRBSI(カテーテル関連血流感染症)の症例において、血栓がある場合とない場合で初期対応や治療に違いはありますか?
A1:血栓がある場合には、できるだけ早くカテーテルを抜去した方がよいです。また、血栓性静脈炎を合併している場合には、菌血症が持続する頻度が高くなるので、治療開始後に血液培養が陰性になることを確実に確認した方がよいと思います。血栓性静脈炎が証明された場合には、治療期間を長め(管理人追記:血液培養陰性から4-6週間)に設定することが多いです。

Q2:偽痛風の診断に偏光顕微鏡を用いますか?
A2:自施設に偏光顕微鏡があれば、使用するのが良いと思います。偏光顕微鏡がなくても、関節液のグラム染色で結晶が見えることがあり、参考所見として有用です。

Q3:薬剤熱は何年間も内服している薬剤でも起こりうるでしょうか?
A3:薬剤熱の原因となる被疑薬の、使用開始から薬剤熱発症までのタイミングに関して、Uptodateのdrug feverの項には、less than 24 hours to many monthsと記載されており、症例や薬剤によって幅があると考えられています。何年も前に開始した薬剤が薬剤熱を引き起こすような頻度は稀だと思いますし、経験的にはまず直近の1ヶ月程度の期間に開始した薬剤をリストアップして、検索を進めていくことが現実的な対応かと思います。

Q4:尿道カテーテル留置中の患者が尿路感染症を発症した場合、必ず尿道カテーテルを入れ替える必要がありますか?
A4:大前提として、尿道カテーテル留置は尿路感染症リスクを増すので、不要な尿道カテーテルはいち早く抜去すべきです。尿路感染症を発症した場合に必ず入れ替える必要があるとまでは言えませんが、留置されている尿道カテーテルから採取した尿検体を培養すると、カテーテルの内腔に定着している菌を培養してしまう可能性があるので、尿培養を提出する際には、カテーテルを抜去した後の自尿、またはカテーテルを入れ替えた後の尿を検体として利用するのが理想的ではあります。

Q5:フォーカスがはっきりしている発熱症例(例えば腹腔内膿瘍など)に対して抗菌薬を開始、変更する際にも、Fever work upの基本である、血液培養、尿培養、胸部レントゲンといった検査は実施した方が良いですか?
A5:発熱の原因である感染巣がはっきりしている場合には、胸部単純レントゲン写真や尿培養検査は必須ではありません。菌血症の有無の確認は、起因菌の特定、治療期間の設定などに有用なので、抗菌薬の開始、変更前に血液培養は必ず提出されることをお勧めします。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育