発熱性好中球減少症

発熱性好中球減少症の講義で、G-CSFについてのご質問が多かったため、簡単にまとめてみました。参考になれば幸いです。

質問: G-CSFの適応は?
※詳細は、各種ガイドラインをご参照ください1-4)

・1次予防、2次予防、治療的投与、の3つに分けて考えます。

(1)1次予防:治療1コース目にG-CSFを予防的に使用
・まずFN発症リスクを検討する1, 3, 4)
 20%以上:high risk
 10-20%:intermediate risk
 10%未満:low risk
・悪性腫瘍、化学療法レジメン、患者要因を評価する4)
 ※確立したアルゴリズムがある訳ではない、最終的には個別に検討する4)
 ※化学療法レジメンからrisk評価するのが現実的
(各レジメンのFN発症頻度は、文献3と4参照)
・FNの予測リスクが20%以上の患者
 →1次予防のG-CSF投与を推奨1-4)
 効果1-4):FN減少、full doseの化学療法が可能になる
      入院が減少する可能性がある
      死亡率が低下する可能性がある
・FNの予測リスクが10%未満の患者
 →1次予防のG-CSF投与は推奨しない1-4)
・FNの予測リスクが10-20%の場合
 →以下の状況で1次予防のG-CSF投与を考慮3, 4)
 65歳以上3)
 65歳以上でfull doseの化学療法を行っている4)
 癌薬物療法歴、放射線治療歴
 持続する好中球減少症
 骨髄浸潤、最近の手術
 黄疸(総ビリルビン>2mg/dL)
 腎機能低下(CCr<50)

(2)2次予防
・ASCOガイドラインは、化学療法前コースでFNを発症した患者に同じdoseで次のコースも治療する場合、2次予防を推奨2)。2次予防を行わずに、抗癌薬の投与量減量や1サイクルの期間の延長で対応してもよいかもしれない2)
・NCCNガイドラインでは、化学療法前コースでFN発症した場合、dose-limiting neutropenic eventが起こった場合(次のコースの投与量に影響を及ぼすような、高度の好中球減少または長期間の好中球減少が起こった場合)で、同じdoseとscheduleで治療を行う場合に、2次予防を推奨(本文はhigh-risk groupとみなすと記載があるため、「推奨recommend」のはずだが、表には「考慮consider」と記載されている4))。

(3)治療的投与
・FN発症者への投与は一般的には推奨されない1-3)
・予防的にG-CSFが投与されている場合は、そのまま継続
・予防的にG-CSFが投与されておらず、感染関連の合併症のリスクが高い場合は考慮2-4)
 sepsis syndrome(敗血症、多臓器障害multi-organ dysfunction)
 好中球100 /μL未満
 好中球減少期間が10日より長いと予想される
 65歳超える
 コントロール不良の原疾患
 肺炎やその他の臨床的に診断された感染症
 侵襲性真菌感染症
 発熱時に入院した場合
 FNの既往がある
・効果1-4)
 解熱が早まる
 抗菌薬投与期間を短縮
 入院期間の短縮
 好中球の回復が早まる
 しかし死亡率は改善しない

(4)投与方法2, 4)
・予防の場合
 フィルグラスチム
  抗癌薬投与後1-4日以内に開始
  好中球2000-3000 /μL or 正常値に回復するまで
 ジーラスタ®
  抗癌薬投与後1-3日に投与(翌日が最適)
・治療の場合
 フィルグラスチム:好中球がほぼ正常になるまで

参考文献
1) Clin Infect Dis 2011;52:e56-93
2) J Clin Oncol 2015;33:3199-3212
3) 日本臨床腫瘍学会編:発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン 改訂第2版, 南江堂, 2017
4) NCCN clinical practice guideline in oncology: Myeloid Growth Factors. (Version 1.2017)

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育