第3回亀田感染症セミナーin東京での質問への回答(講義3)

「第3回亀田感染症セミナーin東京」で頂いた質問への回答です。たくさんの質問をありがとうございます。

講義3:発熱性好中球減少症

Q1:抗真菌薬の経験的治療と先制攻撃的治療の違いは?
A1:経験的治療は、真菌感染症の検索をしつつ、持続する発熱に対して行う抗真菌薬治療のことで、真菌感染症らしさは問わない。先制攻撃的治療は、真菌感染症の検索をして、いずれかの検査(血液培養、喀痰培養、画像検査、βDグルカン、ガラクトマンナン抗原など)が、侵襲性真菌感染症を示唆した場合に行う抗真菌薬治療のこと。

Q2:血液悪性腫瘍治療開始前に、HSVとVZVの検証をする必要があるか?
A2:HSV IgG、VZV IgGを検索したほうがよいと思います。

Q3:固形癌の末期の方で予後は月単位と考えられるような方、PS=2程度、脳転移の疼痛に対してステロイド内服。それに対するPCP予防はいつまで必要でしょうか?
A3:決まった答えはなのですが、一般的にあと予後が1-2か月という時点でステロイドを始める場合、予防内服はしないことが多いと思います。また、薬剤の副作用がでた場合も、中止することが多いと思います。ただし、まだ半年など予後が見込める場合は、PCPのリスクやそれに伴うADLの低下と、副作用を天秤にかけて検討する必要があります。状況によりますが、1日0.5錠(リウマチ性疾患でエビデンスがあります)や、週2回2錠内服、という方法も検討されると思います。

Q4:ステロイドのよるPCP予防はPSL 20mg/日を4週間が目安、ということだったが、それよりdoseが多くて短期間な場合、投与が必要となるか?
A4:短期間の場合は、不要かもしませんが、総投与量や、基礎疾患・併用している免疫抑制薬の有無、などで検討しています。ステロイド治療が2-3週で終了する場合は、通常予防内服は不要だと考えます。

Q5:FNで初期に選択した薬剤をさらに広域にエスカレーションした症例はありますか?
A5:CFPMで開始してショックとなった場合は、耐性グラム陰性桿菌・嫌気性菌・MRSA・Candidaなどによる重症感染症を考慮して、各種培養を採取した上で、MEPM+VCM+MCFGにすることはあります。

Q6:G-CSFの投与適応と期間は?
A6:別の投稿で説明します。

Q7:MEPM+VCMで4日間治療しても昇圧薬が切れない重症患者。基礎疾患にCKD-HD。いつから抗真菌薬を使用するか?血液培養陽性になってから?
A7:非血液悪性腫瘍患者の場合、経過や循環動態などのリスク評価、想定される感染臓器を検討しつつ、βDグルカン値、血液培養を採取した上で、治療開始することはありますが、基本的には培養結果をみてからのことが多いです。
血液悪性腫瘍患者で発熱性好中球減少症の場合、初期治療開始後に状態が改善傾向であれば、追加不要。4日以上発熱が続く場合、改善がない場合は、血液培養や真菌マーカーを提出した後、ミカファンギンやアムホテシリンB脂質製剤などを追加します。

Q8:AMLの寛解導入療法で、ST合剤の不要な理由は?
A8:罹患率が低いからです。臨床試験等で発症頻度が高いことは示されていません。

Q9:FNに対して抗菌薬治療に、追加されるべき治療はある場合はあるか?
A9:G-CSFの使用が、状況によって検討されます。

Q10:メルカゾールの有害事象での無顆粒球症での、発熱・好中球減少症では、ERではFN対応でよいか?
A10:よいと思います。

Q11:PCPの予防内服:SLE PSL 5mg/日、アザチオプリン2Tで治療している場合、STをやめてもよいか?
A11:一般的には、よいと思います。

Q12:基礎疾患のない初診患者が、発熱+好中球減少を呈して受診した時には、骨髄検査の結果がでるまでは、セフェピム単剤で経過をみればよいでしょうか。
A12:発熱の原因を検討して、focusがはっきりしないFNであれば、血液培養を提出した後、セフェピムで経過をみてよいと思います。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育