敗血症性ショックにおける早期高中心静脈圧の暴露と死亡・急性腎傷害(AKI)の関連:後ろ向き研究

Journal Title
Early persistent exposure to high CVP is associated with increased mortality and AKI in septic shock : A retrospective study

論文の要約
【目的】
敗血症性ショックの管理において、近年CVP(central venous pressure)は輸液蘇生の指標として推奨されなくなっているが、High CVPはAKI(acute kidney injury)、死亡率と関連があることが示されている。しかし、経時的なCVPの変化による予後への影響は不明である。本研究では、敗血症性ショックにおけるHigh CVPと28日死亡割合、AKIの関連を調査し、初期輸液蘇生の至適CVP範囲を探ることを目的とした。

【方法】
本研究はAmsterdam University Medical Centers Database (Amsterdam UMCdb)のデータを使用した後向きコホート研究で、集中治療室(ICU)に入室した18歳以上の敗血症の定義を満たした患者が含みいれられた。時間変動するCVPは、時間加重平均CVP (TWA-CVP)で示し暴露因子とした。High CVPはTWA-CVPが12mmHg以上と設定された。主要評価項目は28日間死亡割合、副次評価項目はAKI発症割合とした。カテゴリ変数にはカイ二乗検定またはフィッシャーの正確検定、グルーブ間比較にはマン・ホイットニーU検定を用いた。また区分指数関数的加法混合モデル(PAMM)を使用し、High CVPに暴露された割合、暴露された時間を算出し、High CVPの暴露効果を定量化した。

【結果】
合計9668人の敗血症性ショックの患者が対象となった。28日死亡割合は8.2%、AKI発症割合が41.1%だった。毎日のTWA-CVPは、主にICU入室後24時間以内のTWA-CVPと28日死亡率に強い関連があり、CVP6-12cmH2Oの場合、患者の死亡割合が最も低くなった。また、最初の24時間以内のHigh CVP暴露が5時間を超えると死亡リスクが2.69倍[95%CI 2.34-3.10]に増加した。High CVPに暴露された患者では、AKI発症リスクが2.06倍[95%CI 1.93-2.19]に増加した。

【結論】
ICU入室後、24時間以内の敗血症性ショック患者の至適CVP範囲は6-12cmH2Oである。High CVPに5時間以上暴露されると死亡率、AKI発症割合が増加した。

Implication
本研究は、敗血症性ショックに対するCVPの経時的変化を加重平均を用いて表し、死亡・AKIとの関連を評価した。しかし、COPD、心不全などの未測定交絡が多く残存し、因果関係を示すことは出来ない。さらに敗血症性ショックと診断された時点でのCVP値は明らかではないこと、CVPは輸液蘇生と相互的に関係するため因果の逆転が起こっている可能性があることから、至適CVP範囲の同定は不適切であると考える。また、近年敗血症性ショックにおけるCVP測定は普遍的ではなく、CV挿入の要否は施設間ごとの差が大きいため、一般化可能性も低い。

文責 冨松真帆/南三郎

このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科