動脈圧の非侵襲的モニタリング: 上腕に替わる指または下腿: 3つのICUにおける前向き研究

Journal Title
Noninvasive Monitoring of Arterial Pressure: Finger or Lower Leg As Alternatives to the Upper Arm: A Prospective Study in Three ICUs

論文の要約
【目的】
急性期医療の現場では、静脈路や創傷、骨折などのために、オシロメトリック式自動血圧計のカフを上腕に装着できないことがある。動脈カテーテルは動脈圧測定のゴールドスタンダードではあるが、侵襲が高く、その使用は非重症患者にはリスクベネフィットが合わない。オシロメトリック式自動血圧計は上腕以外に下腿に利用されることが一般的となっているが、この装置は上腕での測定で実証されたものである。指を利用する方法もあるが、急性期医療の場面では精度と正確度は不確かである。本研究の目的は、動脈圧の非侵襲的測定値と侵襲的測定値の一致度を部位別(下腿、指、上腕)で比較した。

【方法】
本研究は、2020年2月20日から2021年6月2日までの期間に、フランスの3つの大学病院のICU患者を対象とした前向き観察試験である。対象は、動脈カテーテル(橈骨動脈または大腿動脈)が留置され、5分間の動脈圧(AP)が安定しており(MAPで>10%の変化がなく、昇圧剤の変更がない)、治験責任医師が対応可能と判断したものとした。除外基準としては、上腕中部周囲径が42cmを超える場合、非侵襲的MAPが両腕で非対称(5mmHg以上)の場合、試験プロトコールに適合しない緊急治療が必要な場合、妊娠、18歳未満、被保佐人、後見人とした。血圧測定時のベッドの背もたれの高さ(0-45度)は特に変更せず、現場での角度のままとした。測定セットは連続した3連測定が6セットとした。心血管系の介入があった場合は、測定を追加し、傾向解析に使用した。各ペアについて測定誤差(=非侵襲的-侵襲的)を算出し、測定誤差の平均をバイアスとした。同じセット内の測定値は個別に分析or平均化し、Bland-Altmanプロットを作成した。侵襲的測定と非侵襲的測定の間のバイアスおよび一致区間の境界は線形混合効果モデルを用いて推定した。

【結果】
APの測定・表示に失敗した患者は19人(13%)で、指では発生したが、他の部位では発生しなかった。分析した130人の患者において、非侵襲的測定値と侵襲的測定値の一致度は、上腕や指よりも下腿で悪化し(平均APについて、バイアス±SDはそれぞれ6.0±15.8 vs 3.6±7.1および0.1±7.4mmHg)、エラー関連リスクの頻度が高くなった(リスクなしはそれぞれ測定の64% vs 84%および86%)。心血管介入後に再評価された33人の患者において、平均APの変化に対する一致度と治療による有意な変化を検出する能力はともに良好であり、3つの部位で同様であった。

Implication
指カフシステムによる動脈圧測定は、測定および表示可能であれば、急性期においても下腿よりも信頼できる代替手段となる可能性が示された。対象施設の集中治療室に入室した4386人から対象となったのはわずか130人と3%以下であり一般化可能性に問題がある。今後さらに検証が進めば、上腕の測定に代替手段として有望である。

文責 富田将司/南三郎

このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科