当科の特徴

 房総半島のほぼ南端に位置し、風光明媚な人口3万人ほどの小さな鴨川市に、病床数917床の臨床研修病院である亀田総合病院があります。亀田総合病院救命救急センターは、人口13万人の安房医療圏(館山市、鴨川市、南房総市、安房郡鋸南町)を中心に、南房総の広域と太平洋上の救急医療をカバーしています。2016年の受診患者数は27,890人(1日平均76人)、そのうち4,834人(1日平均13人)が救急車やヘリコプターなどで救急搬送されています。高齢化の進んだ地域の内因性疾患と交通外傷が多く、さらにスポーツ外傷や動物咬傷など、自然が豊かで観光が盛んな地域特有の傷病者も多く受診します。当センターは、いわゆる北米型ERの体制を敷いています。ヘリコプターや救急車から自力受診まで、緊急に受診した患者は重症度にかかわらず全て同じ救急センターでの救急診療を受けます。全国でもいち早くトリアージナースを導入しており、受診手段によらず重症患者を早期に拾い上げるシステムが確立しています。この先進的なシステムが安房の地域住民と増え続ける観光客の救急医療を担っています。

 亀田総合病院の様々な診療科と同様に当センターは医学教育に力を入れています。救急初期診療における臨床推論を中心に、心肺蘇生と外傷診療のプロトコール、災害医療、集中治療など、科学的根拠に基いた医学教育を行っています。海外留学を目指す若手医師も多く、当センターで研修を受けた医師3名が米国で現在活躍し、更に2名が挑戦中です。また、ここ1−2年は臨床研究にも力を入れ始め、若い医師に疫学統計学を駆使した研究を教えています。2017年には、当センターの医師を筆頭著者とする2編の英語原著論文がAnnals of Emergency Medicine と British Journal of Surgery に相次いでアクセプトされ、他にも共著で7編の英語原著論文がアクセプトされました。

 診療と、医学教育と、科学を重視すること、加えて、スタッフが房総の豊かな自然と人情を満喫することが亀田総合病院救命救急センターの目標です。