重症成人の気管挿管におけるビデオ喉頭鏡検査と直接喉頭鏡検査

Journal Title
Video versus Direct Laryngoscopy for Tracheal Intubation Critically Ill Adults

論文の要約
[目的]
救急室及び集中治療室における気管挿管において、ビデオ喉頭鏡と直接喉頭鏡のどちらが初回の試行で成功する確率が高いか検証すること。

[方法]
全米の7つの救急室と10の集中治療室を含む17施設において、18歳以上の気管挿管を要する重症成人患者を対象に、ビデオ喉頭鏡または直接喉頭鏡による挿管を受ける群に1対1にランダムに割り付けた。ビデオ喉頭鏡群ではオペレーターは最初からビデオの画面を見ながら挿管し、直接喉頭鏡群では当初から直接喉頭鏡の使用が指定された。両群ともブジー、スタイレットを使用し挿管の確認はカプノメータもしくは二酸化炭素比色法によってなされた。主要アウトカムは初回の挿管における成功の有無、副次アウトカムとして挿管2分以内のSpO2<80%の低酸素血症、SBP<65mmHgの低血圧、昇圧剤の新規開始または増加、心停止の有無が評価された。サンプルサイズは、直接喉頭鏡の初回成功率を80%ととし、ビデオ喉頭鏡にて5%改善させると仮定し、検出力90%、α5%として、合計2000人と見積もり、1000人の時点で中間解析を行い、有意水準はα0.01として予定された。解析はIntension-to-treatで非調整とし、感度分析には一般化混合モデルを用いて、各因子で調整を予定した。

[結果]
2022/3月から2022/11月の間に1417名が登録された。中間解析が行われ、ビデオ喉頭鏡群では初回の試行で85.1%、直接喉頭鏡群では70.8% (p<0.001 95%CI 9.9〜18.7)と前者の方が有意に成功率が高かった。感度分析も同様の結果であった。副次アウトカムに関しては両群で有意差がなかった。

Implication
今回の試験における挿管のオペレーターの75%以上が挿管の経験数が平均50回程度の研修医クラスである点、スタイレット、ブジーを日常的に使用されている施設で行われたため一般化可能性に問題がある。また、中間解析の結果であるため効果量は参考程度と考えるべきである。さらに、これまでの研究と比較し、2019年のコロナ感染のパンデミックの影響など時代的背景からビデオ喉頭鏡が使われる頻度が高くなり、新人のトレーニングの機会が増えていることもこの結果に寄与している可能性がある。
ビデオ喉頭鏡による挿管がさらに普及していくことが考えられるが、上記スタイレット、ブジーを使用している前提であることには注意が必要である。

文責 長田千愛/南三郎

このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科