米国のプライマリケアにおけるCOPDに対するCAPTUREツールの判別精度

Journal Title
Discriminative Accuracy of the CAPTURE Tool for Identifying Chronic Obstructive Pulmonary Disease in US Primary Care Settings

論文の要約
【目的】
COPDは未診断のままで、死亡・罹患の原因となっており、特にPrimary careの場面でその傾向が見られる。未診断の患者は健康状態が損なわれ、急性の呼吸器イベント、医療の利用、全死亡率のリスクが高くなる。
2017年にCOPDのスクリーングツールであるCAPTUREツールが開発され、PEF(最大呼気速度)と組み合わせて感度・特異度が発表された。その後、様々な国でツールのコンポーネントの検証がおこなわれたが、PEF(最大呼気速度)の使用は限られていた。そこで、本研究は、米国の様々な状況で、CAPTUREツールとPEFを含むフルセットでの外的検証を行った。

【方法】
2018年10月12日-2022年4月1日の期間に、7つのプライマリケア診療ベースの研究ネットワーク内のプライマリケア診療所で、45歳から80歳の男女で、自己申告によるCOPDの診断がなく、過去30日以内に抗生物質orステロイド全身投与による急性呼吸器疾患の治療を受けていない4679名が登録された。完全にスクリーニングデータが得られた4658名の患者で、人口統計、病歴、COPD Assessment Testスコア、喫煙状況および喫煙歴、過去12ヵ月以内の呼吸器疾患の既往、現在の吸入薬使用歴、modified Medical Research Council dyspneaスコアのデータを集積した。Primary outcomeをCAPTUREツールの感度と特異度、Secondary outcomeをCAPTUREツールの点数の閾値を変化させた場合の感度解析を含め、サブグループにおける検出感度と特異度、陽性的中率(PPV)と陰性的中率(NPV)とした。
スクリーニングテスト陽性は、(1)CAPTURE質問票スコアが5または6、または、(2)質問票スコアが2、3、または4でピーク呼気流量が男性で350L/分未満、女性で250L/分未満と定義し、臨床的に重要なCOPDをスパイロメトリーで定義されたCOPD(気管支拡張後のFEV1/FVC <0.70 または 気管支拡張前のFEV1/FVC<0.65)かつ(FEV1が予測値の60%未満 or 過去12ヵ月以内に急性呼吸器疾患の既往歴があり)と定義された。

【結果】
解析に十分なデータが得られ4325名のうち、未診断の臨床的に重要なCOPD患者110人(4325人中2.5%)のうち、53人がスクリーニング陽性、感度は48.2%(95%信頼区間、38.6%-57.9%)、特異度は88.6%(95%信頼区間、87.6%-89.6%)であった。CAPTUREスクリーニングスコアの陽性閾値を変化させた場合のAUROCは0.81(95%CI、0.77-0.85)、サブグループにおける臨床的に重要なCOPDに対するPPVは10.0%(95%CI、7.6%-12.8%)、NPVは98.5%(95%CI、98.1%-98.9%)であった。

【Implication】
本研究は、COPDのスクリーニングツールであるCAPTUREツールの大規模な外的検証である。その結果は、CAPTUERツールが開発されたときに行われた結果と比較し、特異度は高いものの感度が低く、スクリーニングツールとしては不十分であった。また筆者も述べているように、ピークフローメーターを用いてPEFの測定を要することは、primary careセッティングにおいて、スクリーニングツールとしては汎用性の点でもlimitationである。
今後、新たなスクリーニングツールの開発が待たれる。

文責 富田将司/南三郎

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科