難治性院外心停止における、体外式膜型人工肺を用いた蘇生の早期開始

Journal Title
Early Extracorporeal CPR for Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest
Suverein Martje M, New England Journal of Medicine. 2023;388:299-309 PMID:36720132

論文の要約
【背景】
心室性不整脈は院外心停止の主な原因であり質の高い胸骨圧迫と除細動を早期に行うことで循環を回復させる可能性が高くなるとされる。 Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation (ECPR) は理論上、自発循環のない患者において灌流と酸素供給を回復させる。しかし院外心停止患者におけるECPRの予後改善効果は結論が出ていない。そこで、本研究は、難治性院外心停止患者においてECPRは従来のCPRと比較して予後を改善させるか検証した。

【方法】
本研究は、オランダの10の心臓外科センターで行われた多施設共同無作為化比較試験である。対象は、18歳から70歳で、初期波形が心室性不整脈で、15分以上の蘇生に反応しない、院外発生の難治性心室性不整脈患者とした。患者は、ECPR群と従来CPR群に1:1にランダムに割り付けた。主要アウトカムは、30日後の神経学的に良好な生存 (Cerebral Performance Category 1 or2)とした。サンプルサイズは、ECPRにより良好なアウトカムが8%から30%に改善し、α0.05、β0.2とし、各グループ55人とし、アダプティブデザインにより試験開始後に調整を予定した。

【結果】
2017年5月から2021年2月の間に160名がランダム化され、除外された26人を除く134名がITT解析の対象となった。主要評価項目である30日後の神経学的に良好な生存は20% (14/70) vs 16% (10/64) (オッズ比1.4 95%信頼区間0.5-3.5)であった。副次評価項目である3か月後および6か月後の神経学的に良好な生存はそれぞれ18% (12/68) vs 14%(9/63) (オッズ比1.5 95%信頼区間 0.6-3.8)、20% (14/70) vs 16% (10/63) (オッズ比1.3 95%信頼区間0.5-3.3)であった。

【Implication】
先行のRCT (ARREST、Plague OHCA study) は単施設ハイボリュームセンターでの研究だったが、本研究は多施設で行われた点が強みと言える。しかし、実際にECPR群でECPRを受けたのは全体の66%にとどり、カテーテル留置時間の中央値が20分であり、ARREST試験7分、Plague OHCA studyECPR12分と比較して時間がかかっており、純粋に早期ECPRとCPRを比較しているとは言い難い。しかし、プラグマティック試験として、多施設研究である点から本研究の数字のほうが実臨床に即しているとも考えられる。サンプルサイズの仮定と実際の生存率は大きくかけ離れている点、最終的なアウトカム数が少ないため検出力不足が懸念される。
先のRCTを含め、有意差はなくとも、すべてECPR群にいい傾向がみられる。そのため、ECMOの取り扱いに慣れたハイボリュームセンターを対象とした多施設RCTが行われればECPRの優位性が示される可能性がある。

文責 山田剛大/芥川晃也/南三郎

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科