第3回急性脳出血における、降圧療法を伴う集中治療バンドル試験:国際的な段階的wedgeクラスターランダム化比較試験

Journal Title
The third Intensive Care Bundle with Blood Pressure Reduction in Acute Cerebral Haemorrhage Trial(INTERACT3) an international,stepped wedge cluster randomized controlled trial

論文の要約
【目的】
急性期脳出血に対する、積極的降圧療法の効果を検証したINTERACT2研究の事後解析では、血圧以外に高血糖、高体温、凝固異常が機能予後不良と関連が示唆された。そこで、本研究は、急性期脳出血に対して、上記の血糖、発熱、凝固の指標を組み入れた目標指向型ケアバンドルが予後を改善させるか検証した。

【方法】
本研究は、ブラジル、中国、インド、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、スリランカ、ベトナム、チリの10ヵ国の121病院で行われた前向きstepped wedge cluster 無作為化比較試験である.前述の病院は、グループ1~3に大別化された。グループ1は上記の対象患者の募集を開始し80人以上になった時点で介入を開始、グループ2は160人以上となった時点で、グループ3は160人以上に達し3ヶ月が経過した時点で介入を開始した。
対象は、発症6時間以内の脳出血患者(18歳以上)とした。介入群は、収縮期血圧<140mmHg、体温<37.5℃、血糖コントロール(糖尿病患者;140-180mg/dl 非糖尿病患者;110-140mg/dl)、PT比<1.5(ワーファリン使用患者)を目標として1時間以内に治療を開始することとされた。対象群はSBP<140mmHgのみを目標とした。治療期間は7日間とした。
主要Outcomeは、発症から6ヵ月後の修正Rankin尺度(mRS score)とされた。副次Outcomeは、発症から6ヶ月後の死亡の有無、同時点での帰宅の有無、治療開始7日時点でのNIHSS score,同時点での退院の有無、EQ-5D-3Lを評価した。主要Outcomeには順序ロジスティック回帰分析を行い、施設をランダム効果、各時期・グループを固定効果として調整した。サンプルサイズは、共通オッズ比を0.8とし、power90%、α0.05とし8360人とした。

【結果】
2017年12月12日~2021年12月31日の間に7,036例(平均年齢62.0[SD 12.6]歳、女性36.0%、中国人90.3%)が登録され、介入群に3,221例、通常ケア群に3,815例が割り付けられた。主要Outcomeデータはそれぞれ2,892例と3,363例で得られた。6ヵ月後のmRSスコアは、介入群で良好だった(共通オッズ比[OR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.76~0.97、p=0.015)。副次Outcomeにおいても、治療開始7日後の時点での退院以外の項目全てで介入群の方が良好であるという結果が得られた。

Implication
多国籍で行われたstepped wedgeクラスターRCTであり、サンプルサイズが大きく、対象患者の条件・治療の方法も制限がほとんどない点は強みである。一方、エントリーされた9割近く漢民族であり、評価の期間が4年間と長期に及んだため治療に対する成熟などの影響が比較可能性を弱めた危険がある。しかし、時間差による影響や民族、国などによる感度分析によって調整した後も介入郡の方が予後良好という結果が得られ、結果に頑健性がみられる。本研究は、Low incomeの国を中心に行われた研究であり、先進国ではすでにバンドルが実施されていることが予想され、どれほどインパクトがあるかは不明である。

文責 長田千愛/南三郎

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科