軽症〜中等症の成人喘息患者の治療 ブテソニド/ホルモテロール配合薬の頓用vs低用量ブテソニド維持療法+テルブタリン頓用:多施設共同非盲検無作為化対照比較試験

Journal Title
Budesonide-formoterol reliever therapy versus maintenance budesonide plus terbutaline reliever therapy in adults with mild to moderate asthma (PRACTICAL): a 52-week, open-label, multicentre, superiority, randomised controlled trial
Lancet August23,2019;394:919-28 PMID:31451207

論文の要約
<背景>
喘息患者の多くは症状が軽く発作も間欠的であるが、急性増悪のリスクがある。
これらの急性増悪の多くは低用量吸入ステロイド維持療法で予防しうる。しかし、通常の発作自体が軽く間欠的であるため、患者のアドヒランスが悪く、多くの臨床医は吸入ステロイドを処方することが少ない。
そこで、他の選択肢として発作時の単剤治療としての吸入コルチコステロイドと即効性長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬が検討され、短時間作用性β2刺激薬(SABA)による発作時治療に比べ、重度増悪の抑制効果が高いと報告されている。
しかし、この配合剤による発作時の単剤治療が従来の低用量吸入ステロイド維持療法+短時間作用性β2刺激薬頓用と比較して有効性および安全性は不確実である。そこで今回、軽症〜中等症の成人喘息患者を対象に発作時の単剤治療であるブテゾニド/ホルモテロール配合薬の頓用と、従来の低用量ブテゾニド維持療法+テルブタリン頓用の効果を比較するPRACTICALstudyが行われた。
<方法>
本研究はニュージーランドの15施設が参加した多施設共同非盲検無作為化対照比較試験である。対象年齢18〜75歳、患者が自己申告し、医師により喘息と診断され、割り付け前の12週間に発作時SABA治療単独、または発作時SABA治療+低〜中用量の吸入コルチコステロイドによる維持療法を行っていたものとした。被験者はブテソニド/ホルモテロール配合薬(1噴射中にそれぞれ200μgおよび6μgを含有、症状緩和のために必要時に1吸入)による治療を行う群とブテゾニド(1噴射中に200μg含有、1回1吸入、1日2回)+テルブタリン(1噴射中に250μg含有、症状緩和のために必要時に2吸入)による治療を行う群に、computer-generated sequenceを用いたa block size of eight per siteで1:1に無作為に割り付けられた。主要評価項目は患者1例当たりの重度増悪の年間発生率とした。重度増悪は、喘息による3日間以上の全身性コルチコステロイドの使用、もしくは全身性コルチコステロイドを要する喘息による入院または救急診療部への受診と定義された。サンプルサイズは治療効果をコントロール群が0.3/年/人、介入群を0.185/年/人とし、検出力90%、α5%、10%のドロップアウトを考慮し各群445人と見積もった。解析はITTで行った。
<結果>
2016年5月4日〜2017年12月22日の期間に885例が登録され、ブテソニド/ホルモテロール配合薬頓用群に437例が、ブテソニド維持療法+テルブタリン頓用群には448例が割り付けられた(中間解析において想定していた増悪率よりも低く、必要サンプルサイズは2112人とされたが、資金提供の問題から最初に予定したサンプル数の変更はおこわなれなかった)。primary outcomeは、患者1例当たりの重度増悪の年間発生であり、ブテソニド/ホルモテロール配合薬頓用群がブテソニド維持療法+テルブタリン頓用群に比べ、31%有意に低かった(絶対発生率:0.119vs0.172、相対値:0.69、95%信頼区間[Cl]:0.48〜1.00、p=0.049)。secondary outcomeとして、重度増悪の初発のまでの期間はブテソニド/ホルモテロール配合薬頓用群がブテソニド維持療法+テルブタリン頓用群よりも長かった(HR:0.60、95%Cl:0.40〜0.91、p=0.015)また、1例当たりの中等度〜重度増悪の年間発生はブテソニド/ホルモテロール配合薬頓用群がブテソニド維持療法+テルブタリン頓用群に比べ、有意に低かった(絶対発生率:0.165vs0.237、相対値:0.70、95%信頼区間[Cl]:0.51〜0.95、p=0.024)また、中等度〜重度増悪の初発までの期間も、ブテソニド/ホルモテロール配合薬頓用群の方が長かった(0.59、0.41〜0.84、p=0.004)

Implication
中間解析において出された必要サンプル数は満たしていないが、重度急性増悪の発生率においてブテソニド/ホルモテロール配合薬頓用群が有意に抑制した。当研究は実臨床の患者アドヒアランスを反映するためPROBE法を採用している。参加者自身が自らの吸入器の使用が記録されていることを認識しており、患者のアドヒアランスが実臨床とは異なる可能性はあるものの、この研究結果に影響はすくないだろう。当研究結果は2019 Grobal Initiative for Asthma (GINA)の推奨を後押しする結果となり、今後、軽症喘息患者に対してこの配合剤の頓用は重要な選択肢となるだろう。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科