救急外来における急性非代償性心不全(以下ADHF)を肺エコーまたはCXR /NT-proBNPでの診断精度を比較したランダム化比較試験

Journal Title
Lung ultrasound integrated with clinical assessment for the diagnosis of acute decompensated heart failure in the emergency department: a randomized controlled trial
Pivetta et al. Eur J Heart Failure 2019.PMID30690825

Summary
救急外来は呼吸困難を主訴に受診する方は非常に多い。呼吸困難の原因としてADHFは多く、65歳以上では45-55%の有病率があると言われており、誤診または診断の遅れによって医療費の増大やICU入室率のリスクが増大することが知られている。
しかし、呼吸困難の鑑別疾患は多種多様に渡り、診断は難しいことより有用な検査ツールが必要となってくる。
本研究では呼吸困難を主訴に来た患者をADHFと診断するのに肺エコーとCXR/NT-proBNPの診断精度を比較した。肺エコー検査では1肋間でBラインが3本以上ある場合を陽性として胸部8箇所に区別して施行した。
デザインは2014年1月-2015年3月にイタリアの2つの大学病院に呼吸困難を主訴に来院した患者518人をComputer permuted block randomisationでLUS群:CXR/NT-proBNPを1:1に割り当てた。80%power、αエラー5%、感度10%の差を検出するために各群に258人が必要である。LUSまたはCXR/NT-proBNPを使用した際の診断と退院後/死亡後のカルテレビューでの診断で比較した。
AUCで比較すると[LUS]94.5% vs. [CXR/NT-proBNP]87.2%,respectively;P<0.01)であり
有意にLUS群の方が診断精度が高かった。
感度はLUS:CXR/NT-proBNP=84.7:81.0、特異度はLUS:CXR/NT-proBNP=91.0:88.8、陽性的中率LUS:CXR/NT-proBNP=89.7:81.8、陰性的中率はLUS:CXR/NT-proBNP=86.5:88.2であった。

Implication
本研究は全患者の年齢の中央値は79であり高齢者が多く、高齢者では併存疾患が多く呼吸困難を単一疾患のみで説明できないことが多く、本研究では併存疾患が考えられても主要原因疾患をあげて検討されている。検査結果がどの程度であればADHFと診断するかは明記されておらず、エコー所見やNT-proBNP値がどの程度であればADHFと診断するかはそれぞれの臨床医の判断に基づいている。
本研究での主要項目の結果はLUSが検査精度は高いという結果であったが、全患者の80%が同一施設であるLimitationは大きい。診断をする際に研究者の心理的な自己実現性予言のbiasが入り込んでしまう可能性が高い。本研究のみでADHFを診断するのに肺エコーが有効とは言い切れず、多施設でRCTが行われるべきである。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科