敗血症性ショックの早期管理における循環動態の指標としてLacとCRTのどちらが死亡率を改善するか?

Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2019 Feb 19;321(7):654-664. doi: 10.1001/jama.2019.0071.

敗血症性ショックの管理において、血中乳酸値(Lac)を反復測定し、これを指標とした循環管理を行うことが推奨されている。しかしLacはショック以外の原因でも上昇する、治療に対する反応が遅いなどの問題をはらんでいる。Lacに代わる循環動態の指標として、末梢循環を直接反映すると考えられるCapillary Refilling Time (CRT)の使用が観察研究から有望視されている。本研究は早期の敗血症性ショック患者で、CRTを指標として管理することで、Lacを指標として管理する場合と比べ死亡率を改善できるかを検証した多施設オープンラベルランダム化比較試験である。結果としてprimary outcomeの28日死亡率を低下させなかった (34.9% vs 43.4%, hazard ratio 0.75 [95% confidential interval, -18.2% to 1.2%]; p=0.06)。Secondary outcomesにおいては、CRT群で介入期間中の輸液量が少なく (-408mL [95% confidential interval, -705 to -110]; p=0.01)、72時間時点のSequential Organ Failure Assessmentスコアが低い (-1.00 [95% confidential interval, -1.97 to -0.02]; p=0.045)という結果であった。

早期敗血症性ショックの管理において、CRTという簡便で直接的に末梢循環を評価する指標を用いることで、輸液量減少、臓器障害軽減につながる可能性があることを示唆したことは、今後の研究に繋がる重要な知見ではある。事前設定されたサンプルサイズ数が大きな効果量の見積もりに基づいており、under powerであった可能性がある。CRTの測定は設備に依存せず施行できるという点は一般化可能性が高いと言えるが、地域が南米に限定され、比較的若い年代に患者が多く組み入れらていること、Stroke Volume Variation (SVV)やPulse Pressure Variation (PPV)、End Expiratory Occlusion TestやPassive Leg Raisingなどの複雑な指標や試験を駆使した輸液反応性の判断が8割以上の患者で判定を完遂できているなど、外的妥当性に大きな問題がある。同様に外的妥当性の問題として、厳密に決められすぎたプロトコルで治療の裁量が制限されていると考えられる。特に対照群はLacの測定が2時間おきであることでその影響が強く、たとえLacの低下が悪い患者がいても、SVVやPPVだけを頼りにCVPが上がるまで2時間の間輸液を入れ続けるというのは、輸液過剰につながりやすいように思われる。本研究の結果に基づくCRTを指標とした敗血症性ショックの治療は、現実への適用可能性について慎重にならなければならないと考える。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科