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このオープンラベルランダム化試験では、ICUで人工呼吸を要するけいれん性てんかん重積の患者に対して、標準治療と標準治療に加えての低体温療法(32-34℃)を比較した。フランスの11のICUで行われた。主要アウトカムである90日後の神経学的転帰良好(Glasgow Outcome Scale 5)は低体温療法(49%)と標準治療(43%)で差は無い。その他、副次アウトカムでは唯一初日の脳波所見のみが低体温療法群で改善していた。サブグループ解析では年齢が若い(<65歳)ことが低体温療法の良い治療効果と交互作用があった。

本試験はよくデザインされているが、幾つかの制限がある。標準治療群の40%と低体温治療群の60%が神経学的転帰良好と仮定してサンプル数を求めている(一群135例ずつ)が、結果的には楽観的すぎた。オープンラベル試験にソフトエンドポイントが組み合わされていることがバイアスとなりうる。副次アウトカムは独立でないものが多数設定されていて、多重比較の懸念がある。なにより問題なのは、低体温治療が本試験の開始時点と異なり現在ではもはや廃れつつある治療法であることかもしれない。この稀な患者群をさらに若い患者に限定して選択する将来のランダム化試験は実現困難ではないか。

Legriel S et al. Hypothermia for Neuroprotection in Convulsive Status Epilepticus. N Engl J Med. 2016;375:2457-2467.

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科