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この論文では救急外来における肺塞栓症の除外診断のアルゴリズム検討した。
従来の方法の一つであるWell's criteriaをベースとし、これまでのvalidation studyで最も予測精度の高かった3項目を選択、さらにリスクに応じて層別化したD-dimerを併用するという、YEARS clinical decision ruleを作成。この有用性を検証した論文である。オランダの12施設で3465人を対象に行われた。
造影CTを行わなかった群の見逃しの評価方法としては、先行研究に習い3ヶ月間のフォローアップ中にPE/DVTが指摘されるかという"Failure rate"というものが採用されている。主要アウトカムである造影CT非施行群でのFailure rateは0.47%と、Well's criteria+D-dimerのFailure rate(0.42%)と比較し大きな差はなかった。
一方で造影CTが不要と評価された人の割合は48%で、Well's criteria+D-dimerの基準では34%であったことと比較すると14%も増やすことができている。
従ってYEARS ruleはWell's+D-dimerの基準と比較し、感度を落とさず、得意度を向上させているようである。(Well's+D-dimerの感度・特異度は(1)の論文から算出)
問題点としては評価項目にその病気を疑うかという項目が入るというWell's criteriaの循環論法が受け継がれていることと、評価項目の比較対象が同じ集団ではなく、先行研究である点である。

Diagnosis of pulmonary embolism: progress after many YEARS.
Konstantinides SV Lancet.
2017 May 23. pii: S0140-6736(17)31291-6.
doi: 10.1016/S0140-6736(17)31291-6.

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科