2021.03.12 抄読会

担当:渕野先生/指導医 植田先生

Bronchial Blocker Lung Collapse Technique: Nitrous Oxide for Facilitating Lung Collapse During One-Lung Ventilation with a Bronchial Blocker
Tatsuya Yoshimura, MD,* Kenichi Ueda, MD,† Akihito Kakinuma, MD,* Jun Sawai, MD,* and Yoshinori Nakata, MD, MBA‡
Anesth Analg 2014;118:666-70

背景
非換気の肺を効果的に虚脱させることで、胸部手術を容易にすることができる。これまでの研究では、気管支ブロッカーを使用すると,ダブルルーメン気管内チューブを使用した場合に比べて、肺虚脱の時期を遅らせることができた。我々は、2肺換気時の吸入ガスに亜酸化窒素(N2O)を使用することで、その後の気管支ブロッカーを用いた1肺換気時の肺虚脱が臨床的に改善されるという仮説を立てた。

方法
50人の患者を無作為に2群に分けた。N2O群(n=26)またはO2群(n=24)。N2O群には酸素とN2Oの混合ガス(Fio2=0.5)を,O2群には1肺換気を開始するまで100%の酸素を投与した。 肺の隔離は、Arndt®ワイヤーガイド式気管支ブロッカー(Cook® Critical Care, Bloomington, IN. 患者を側臥位にした後、気管支ブロッカーのカフを気管支鏡の監視下で膨らませ、その後、両群とも1肺換気時に依存肺を100%酸素で換気した。無作為化を盲検化した外科医が、胸膜を開いてから5分後に、肺虚脱の程度を言語的評価尺度(lung collapse scale、0=虚脱なし〜10=完全虚脱)で評価した。また、副次的に、1分後と10分後の肺虚脱を評価した。

結果
胸膜開放5分後の肺虚脱スケールのスコアは、N2O群がO2群に比べて有意に高かった(7対5,P<0.001,WMWodds=7.3,95%信頼区間(CI),6.0〜9.0)。また、10分後にはN2O群で高かった(10対7,P<0.001,WMWodds=10.1,95%CI,1.9〜13.3)。胸膜を開いてから1分後の肺虚脱スケールは、グループ間で有意ではなかった(2対2、P=0.76、WMWodds=1.1、95%CI、0.96-1.2)。1肺換気中に低酸素症(Spo2<92%)を発症した患者はいなかった。

結論
1肺換気の前に50%のN2Oで肺を満たすと、気管支ブロッカーを使用した場合に100%の酸素と比較して、開胸5分後の肺虚脱が促進された。N2O/O2混合ガス(Fio2=0.5)は、1肺換気中のその後の動脈酸素発生に有害な影響を及ぼさなかった。

片肺換気に関する基本的なデバイスや原理の紹介と、生理・薬学に基づいた片肺換気の際の笑気の有用性の説明をしていただきました!
植田先生の手書きの絵をはじめとして、実際に片肺換気を行ったことのない先生方にもとても分かりやすかったとおもいます。
渕野先生、植田先生お疲れ様でした!

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 荻野仁史

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療