Anaesthesia誌:麻酔方法が高齢者の術後12ヶ月の認知機能低下に与える影響~局所麻酔 vs 全身麻酔~
2025.9.30 麻酔科抄読会サマリー
Incidence of 12-month postoperative cognitive decline following regional vs. general anaesthesia in older patients undergoing hip fracture surgery: follow-up of the RAGA trial
Anaesthesia. 2025 Jul;80(7):771-780.
DOI: 10.1111/anae.16545
<目的>
区域麻酔は、全身麻酔に比べて術後12ヶ月の認知機能低下(POCD)を引き起こしにくいかを調べること。
<PICO>
- P:股関節手術を受ける65歳以上の患者
- I:区域麻酔で管理
- C:全身麻酔で管理
- O:POCDの発症率
<結果>
- 解析対象:293例(RA 154例、GA 139例)
- 認知機能低下:RA 25.4% vs GA 29.7%(OR 1.3, 95%CI 0.7–2.2, p=0.39)
:2群間に有意な差は認めなかった。
サブグループ解析においても、両群で12ヶ月後の術後認知機能低下の現象に差は認めなかった。
しかし、術中低血圧についてはGA群で2倍以上多かった。(GA群 79.9% vs RA群 33.1%)
<考察>
- 全身麻酔と区域麻酔とでは、12ヶ月後のPOCD、新規発症の認知症、不安・抑うつの発症に有意な差は認めなかった。
- 本研究は麻酔方法の違いにおける長期的な術後認知機能低下を調べた唯一の大規模RCTと言える。
- 事後解析の経時変化の解析からは、術前から認知機能が低下している患者は長期的なPOCDをきたすリスクが高いと言え、POCDのリスク因子としては全身麻酔による影響より、元々の認知機能低下による影響の方が大きい可能性がある。
<会場での議論>
- 発表者自身が麻酔を受けるならどっちがいい?
→有意な差はないといえ、血圧低下などを考慮すると区域麻酔のほうがいいかも。 - cognitive changeの定義は一般的な概念なのか、今回の研究独自の概念なのか?
→cognitive score自体、明確な定義があるわけではなく、独自の設定になる。 - 今回のプロトコールは事前に公開されていたのか?
→もともとがサブスタディによるものなので、公表されていた? - ランダム化のふたをいつ開けたのか?
→不明 - 脱落数がすごく多いけど、サンプルサイズの計算がどのようにされているかは疑問。
- hip fractureと認知機能障害の関係が特別強いのか?
→高齢者にとって死亡率が比較的高い傷害である。そのような障害の手術におけるPOCDの発生率を知らべることに意義があると考えられる。 - 年齢や麻酔方法による麻酔後の認知機能低下に対する差は?
→この研究では特に議論なし。
このサイトの監修者
亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔