OET受験体験記

OET受験の目的:ECFMG Certificate 取得のために

私がOETを受験した主な理由は、ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)の認証要件を満たすためです。ECFMGは、米国で臨床研修を受ける際に必要な機関で、2025年8月現在は英語力の証明としてOETのスコアが要件となっています。OETは医療現場を想定した内容で構成されているため、英語力の証明として実践性もあり、今後海外での活動を視野に入れる医療者におすすめなだけでなく、日本でも時々遭遇する英語話者の診療にも役立つと考えています。

基本戦略

真っ先に読むべき記事
https://solo-ielts-toefl.com/how-to-study-oet/
言わずとしれたSOLOさんのOET対策記事です。私はこの記事の基本戦略をベースに自分なりに教材などを選んで対策を行いましたが、正直お金を気にしなければとりあえずSOLOさんに頼るのがいいのではないかと思います。

スタート時点の英語レベル

あまり英語力を証明する試験を受けたことなく、4年前に受けたTOEFL iBTは79点でした。Readingはそこそこだけど、リスニング・スピーキングに自信がないという典型的日本人型です。その後、カナダで二年間基礎研究しましたが、研究・USMLEを受けることを優先したこと、あまり仕事で人と喋ることがなかったためそこまで英語力は伸びませんでした。帰国後2年間は麻酔科の勉強などに忙殺され、ほとんど英語の勉強のための時間は取っていませんでした。とりあえずやってみたOET sampleではReading 30/42 Listening 27/42でしたので、SOLOの記事の通りに先に進んでもいいかと考えました。

使用した教材・ツール一覧

OETの学習にあたり、以下の教材・ツールを組み合わせて活用しました。

ツール・教材 価格 用途・特徴
OET Online (Ultimate Plus) 975 AUD / 年 本試験形式に沿った問題演習(Reading, Listening, Speaking, Writing)を網羅。模範解答の音源やスクリプトも提供されており、実践的な学習が可能です。本番の問題よりやや難しい印象でしたが、演習量が豊富で、8回分のプライベートレッスンも含まれており、コストパフォーマンスは非常に良いと感じました。
LingQ 1,400 – 2,100円 / 月 OETの音声を取り込んでShadowing練習に活用しました。音声をアップロードすると自動でスクリプトが生成される機能があり、再生速度の調整やスクリプトとの連動が簡単です。語彙を増やす目的にも有効です。OETが終わった後も英語学習の主役になる予定。
ChatGPT 無料~(有料プランあり) SpeakingやWritingの模範解答を生成。採点基準(PDFなど)を入力することで、より試験に即したシミュレーションが可能になります。繰り返し使うことで、頻出表現の定着や構成の理解にも役立ちました。
Anki 無料 医療英語やOET頻出表現の暗記に使用。自作カードを使って繰り返し復習することで、語彙と定型表現の習得に効果的でした。

学習法の紹介

サンプル問題を解いて自分の課題をある程度認識したうえで、各セクションの勉強時間のウェイトは R:L:S:W = 5:60:30:10 くらいでした。

リスニング:音声知覚力を鍛えるShadowing中心の学習
OETにおいて、日本人受験者が最も苦戦しやすいのがリスニングです。特にPart Aでは、医師と患者の医療面接が題材となるため、英語の医療面接に不慣れな私にとっては、聞き慣れない表現が多く含まれていました。難しいのは医学用語ではなく、むしろ患者が使う日常的な表現です。そのため、こうした会話スタイルにある程度慣れておく必要があります。
また、OETではオーストラリア英語のアクセントが多く使われています。当初は発音に苦労するかもしれないと不安もありましたが、OET Onlineのリスニング教材を繰り返し聴くことで、特別な訓練をしなくても自然と慣れることができました。

具体的には、OET Onlineの教材を用いてShadowing (Dicatation)を繰り返しました。ポイントは聞き取れない音を明確にすることです。
聞き取れない音を探す→速度を落として確認→スクリプトを参照→自分の予測音と実際の音の違いを認識
この作業を繰り返すことで、音声知覚能力が向上しました。日本人の多くはこの能力が低いことがリスニングの壁になっているようです。
また、OET Onlineの音源は速度調整やスクリプトとの比較が難しいため、一度録音し、LingQに取り込むことで、柔軟に再生速度を変えたり、スクリプトと連動させながらShadowingできるように工夫しました。テスト3週間前に受けたOET online mock testでは29/42でした。OET onlineの教材は実際のテストや公式サンプルに比べると難度が高いように感じました。

スピーキング:評価基準の理解と模範解答の活用
スピーキングはやり始めた当初は全くスムーズに喋ることができず、これはまずいと思ったのをよく覚えていますが、適切な練習をすれば誰でも短期間で伸びると思われます。まずOETの採点基準をしっかり理解することから始めました。と言っても、自分で評価基準を読んでもよくわかっておらず、OET onlineのプライベートレッスンで指摘されて初めて評価基準が重要であることを理解しました。以下に書いたように自分はAIを活用したスピーキング対策をしていましたが、OETの採点基準を理解した英語話者とのレッスンは必要不可欠かと思います。その上で、以下のような学習法を実践しました:
OET Onlineの模範解答音源を使ったShadowing
ChatGPTに模範解答を作成させ、それを音声に変換して繰り返しShadowing
模範解答の中から定型表現や返答のパターンを習得
ChatGPT相手にひたすら壁打ち(ChatGPTのSoraと練習)
プライベートレッスンでさらなる改善点をあぶり出す

ChatGPTに模範解答を作成させる際は、以下のようなPromptを使用しました:

You are my personal interlocutor and instructor for the OET speaking section. When assessing the session, refer to the attached criteria. During simulations, provide only the information requested to allow me to practice asking questions. Follow the patient role as described in the scenario card. Avoid complex questions and present them one at a time when offering model examples.

採点基準のPDFを一緒に入力することで、より質の高い模範解答が得られました。

ライティング
ライティングは、限られた時間内で紹介する相手に必要な情報をまとめるスキルが問われます。複数の模範解答を参照しながら、定型的な構成を覚えることに重点を置きました。書く内容に関しては、普段から紹介状を書き慣れている人にとってはそんなに苦労しないのではないかと思いました。あまり勉強しませんでしたが、本番でも合格ラインより余裕を持って合格しました。

リーディング
OET onlineの問題はとても難しく全く時間内に終わらない感じでしたが、公式Sampleでは合格点が取れていたのであまり勉強せず本番に挑みました。

試験本番

勉強期間は3ヶ月程度で、平日は1−2時間程度勉強、土日は平均4時間勉強したかと思います。練習で受けてみた試験本番で運良く1回で合格しました。運良くというのは他の方の体験記を参照すると、特にリーディングとリスニングはスコアが安定しづらいと聞いていたためです。
スピーキング本番は、自宅の空き部屋を使用してオンライン受験しました。Interlocutorのアクセントが自分の聞き慣れないChinese系アクセントで、言っていることがわからないことも多く焦りましたが(「少しゆっくり喋ってくれ」と言って、「いいよ!」と言われた後もあまり速度は変わりませんでした。)、実際のタスクが始まってからは言う事が予測できるのでそんなに困りませんでした。もっと要求が強い系のタスクが来るかと思いましたが、2つともあっさりしてました。結果は合格ラインの少し上くらいで、勉強して一番伸びたのはスピーキングかなと感じました。
残りのセクションはコンピュータ形式で東京のPrometricで平日しか予約が取れなかったため平日に受けました。初めて行く場所だったので、少し早めに行ったのですが、実際行き方で少し迷ったので早めに行って良かったです。両隣の人が同じタイミングでOETを受けているようでした。以前TOEFLを受けた際に他の人が入ってくる音が気になってリーディングに集中できないということがあったので、問題の説明セクションなどはあえてゆっくり時間をかけてみましたが、OETはリスニングから始まるためむしろ大音量で音に集中できることもあり、あまり不要な心配だったなと感じました。
リスニングはPart Aでいかに稼げるかが重要とのことで、Part A形式の練習に重きをおいて臨んだところ本番でもなんとかおそらく20/24くらいは取れたと思われる出来でした。どうしても少し聞き逃してしまうところがありましたが、切り替えが重要です。Part BとCは多分スクリプト読んでも答え絞りきれないなと思うような難易度の高い問題が多かったです。350点ちょうどだったので、やはりもっと勉強しないといけないなと感じました。
リーディングは練習では時間がなくなることはなかったのですが、Part Bが演習問題よりだいぶ難しかったことや緊張していたせいか思った以上にPart B/Cに時間がかかって、2問ほど時間不足で落としました。おそらくPart Aがほとんど満点だったためなんとか合格ラインに乗りましたが、本番に臨む前に練習ではもっと余裕が必要だなと思いました。もう少しReadingの問題演習をしていても良かったかなと思いました。結果的にギリギリ合格ラインでした。
ライティングは割とあっさりした内容で、時間もかなり余裕があったのでゆっくり見直しをして終わりました。結果はECFMGの合格ラインだと300点なので余裕を持って合格しました。

おわりに

自分はたまたま運良く1回で受かることができましたが、もう一度受けて確実に受かる自信は全くありません。全セクションで同時に合格点を取ることが一番の難関だと思います。確実に受かるためには、継続的な学習で特にリスニングとリーディングの力を身に着ける必要があると思われます。辛い戦いになる可能性がある一方で、OETに受かることで人生の新しい道が開ける可能性があり、英語力向上の動機づけとしても努力する価値がある試験だと思います。本記事がこれからOETを目指す方の参考になれば幸いです。

文責:山本 亮介

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔