USMLE Step3 合格体験記:最後の試練を越えて
亀田総合病院麻酔科の金です。この度、USMLE Step3に合格しました。これで、Step1・Step2 CS・Step2 CKに続き、USMLEの全ステップを完了しました。フルタイム勤務しながら試験対策は決して楽ではありませんでした。その経験をシェアさせていただき、これからStep3を受験される皆さんにとって、少しでも参考になれば幸いです。
Step3の基本
Step3はUSMLEの最終試験です。麻酔領域においては、Step2 CKのように点数を競う試験ではなく、合否のみが問われることが多いです。実際、Step3のスコアが評価に使われることはほとんどありません。とはいえ、H-1Bビザ申請にはStep3合格が必須条件とされており、特にIMGにとっては、Step3の早期合格がキャリアデザインの自由度を大きく左右しますので、受験のタイミングはよく考えておく必要があります。
Step3は2日間にわたる長い試験です。初日は232問の選択肢問題を6ブロック・7時間、2日目は180問の選択肢問題を6ブロックおよび13個のCCS(Clinical Case Simulation)を9時間かけて行う構成となっています。また、今までのStepと異なり、アメリカでのテストセンターでしか受験できない点も留意すべき点です。
対策の基本方針
Step3の対策として主流なのは、以下の2本柱です。
• UWorld Step3 Qbank(約2000問)
• CCS Cases(Clinical Case Simulation対策)
Step3では、Step2 CKの延長として臨床マネジメントの実践的知識が問われます。ただし、見落とされがちなのが、薬理学や細菌学などStep1レベルの知識の出題が一定数あることです。確実に合格するためには、これら基礎医学の復習も欠かせません。
Step3の特徴として、2日目に実施されるCCSがあります。症例に対して診察・検査・治療をオーダーしながら、時間経過に伴う患者の変化をみていく実践型のシミュレーションです。慣れない試験形式ですが、CCS Casesで内容はほぼ網羅されているので、練習を重ねれば特に問題はないと思います。ただし、実際の試験ソフトは操作性が悪く、オーダーの反映に時間がかかる点には注意が必要です。特に10分間の短いケースでは、時間を意識してオーダーを絞ることが求められます。
学習スケジュール
Step2 CKを2024年7月に受験した後、約半年間は試験から離れていました。Step3の勉強を本格的に始めたのは2025年2月頃からで、病院業務と並行しながらの準備となりました。
使用教材は主に以下の通りです。
• UWorld Step3:約2000問(実際に解いたのは90%程度)
• CCS Cases:1周+復習
• 過去の自作ノート(Step2 CK時の内容)
• 公式の模擬試験
• 公式のサンプル問題
仕事後は疲れて勉強にならないため、朝5時に起きてUWorld、夜に復習とCCSのというルーティンを作りました。模試は1回のみ受験し、「これなら落ちないだろう」と確信できた時点で申し込みをしました。
スケジューリング
私の場合、グアムを選択しました。理由は、日本から最も近く、時差・移動・体調管理の負担が少ないからです。ただし、グアムのPrometricセンターは規模が小さく、予約は非常に困難です。私は試験の3ヶ月以上前から毎日空き状況をチェックし、ようやく連続2日間の枠を確保しました。
試験当日
グアムのPrometricセンターは観光地からやや離れており、ホテルのフロントにタクシーを依頼しました。受付スタッフは非常に親切で、緊張を察して励ましてくれました。
室温は非常に低く設定されているので、冷房対策として羽織れるものを持参することを検討すべきです。
試験の印象として、BiostatisticsやEthics、Social Scienceの比重が想像以上に高く、選択問題の3割ほどを占めていたように感じました。私は睡眠不足も重なり、2日目の午後には集中力が切れて問題文がまったく頭に入らず、正直なところ「雰囲気」で解いてしまいました。
今後に向けて
Step1で大きく失敗し、Step2 CSでアメリカ全土を飛び回り、Step2 CKでは1点でも多く取るために必死になり、そしてこのStep3でようやくUSMLEの旅を終えることができました。
振り返れば、USMLE受験の全過程は決して簡単ではなく、孤独で長く、何度も立ち止まりそうになりましたが、周りの支えがあったからこそ乗り越えることができたと思っています。
アメリカでの勤務オファーもいただき、これからは新たな挑戦が始まろうとしています。またこの麻酔科ブログの場をお借りして、アメリカの臨床現場の様子なども、今後綴っていきたいと思います。
このサイトの監修者
亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔