Anesthesia & Analgesia誌: 腹膜播種減量手術、温熱化学療法術後に専任のAPSチームが介入することでオピオイド消費量が減少する

2025.4.10 麻酔科抄読会サマリー
担当:後期研修医 松本
指導:吉沼

A Dedicated Acute Pain Service Is Associated With Reduced Postoperative Opioid Requirements in Patients Undergoing Cytoreductive Surgery With Hyperthermic Intraperitoneal Chemotherapy
Engy T. Said, MD, et al. Anesth Analg. 2018 Oct;127(4):1044-1050.
DOI: 10.1213/ANE.0000000000003342

背景
術後疼痛管理は、患者の回復速度や合併症リスクに大きな影響を及ぼし、不適切な疼痛管理は、ストレス反応の亢進や慢性疼痛の発症リスク増大、入院期間の延長、医療コスト増加につながる。
多面的鎮痛(Multimodal Analgesia)の重要性が認識され、オピオイド使用を最小限に抑える手法が求められている中、Acute Pain Service(APS)の導入により、より適切な術後疼痛管理が可能となるとされる。
本研究では、APS導入前後の患者の術後疼痛管理の質を比較し、その影響を評価する。

方法
単施設後向きコホート研究で、2014年1月~2016年12月、カリフォルニア大学サンディエゴ校にて行われた。
腹膜播種減量手術+温熱化学療法(CRS-HIPEC)を受けた患者において、APS導入前後の術後0〜3日のオピオイド使用量を比較した。
Secondary outcomeには、各術後日のオピオイド使用量(0〜6日)、離床までの時間、経口摂取開始までの時間、入院期間等が含まれた。

結果
APS群に51人、非APS群に71人の患者がそれぞれ割り付けられた。
年齢、BMI、性別、手術時間に基づいて、傾向スコアをマッチさせたコホートを作成すると、APS群と非APS群で、臨床的に優位な差は認めなかった。

Primary outcome:オピオイド消費量(POD 0–3)
APS群:27.5 mg MEQs(中央値)
非APS群:131.7 mg MEQs(中央値)
中央値の差は67.8 mg MEQ(95%信頼区間:37.7〜106.7、P < .0001)であり、
APS群で有意な減少を示した。
※ MEQs: intravenous morphine equivalents

Secondary Outcomeについては、歩行開始日数や経口摂取開始までの日数の短縮、硬膜外カテーテルの使用期間の延長がAPS群で見られたが、制吐薬の使用には有意な差は認めなかった。

結論
APSの導入は、術後疼痛管理の質を向上させ、オピオイド使用量を有意に減少させた。術後回復の促進に寄与する可能性があり、今後の臨床導入の参考になる

抄読会での議論・意見
・APS介入前の疼痛管理プロトコルはどうなっていたのか?
特に記載なし。可能性としては、医師ごとに管理にばらつきがあり、疼痛コントロールにも差が出ていた可能性がある。
・APS介入によって硬膜外麻酔の成功率が上がった理由は?
術前にcold testして評価してから術中に使用していることや、APSチームにはレジデントが含まれていないことで成功率が上がっている可能性がある。
・本研究に対するPropensity Score Matchingの適用については、2群間の母数の差が小さいため、適正でなかった可能性がある。
・オピオイド消費量が多かった人の特徴などは記載なし。

文責:亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 松本

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔