Drug Design, Development and Therapy誌:意識下気管挿管におけるレミマゾラムとデクスメデトミジンの安全性と有効性の比較:無作為化二重盲検試験

2025.4.10 麻酔科抄読会サマリー
担当:山本 亮介
指導:植田

The Safety and Efficacy of Remimazolam Compared to Dexmedetomidine for Awake Tracheal Intubation by Flexible Bronchoscopy: A Randomized, Double-Blind, Controlled Trial
Chen Q, et al. Drug Des Devel Ther. 2024;18:967–978.
https://doi.org/10.2147/DDDT.S446222

PICO
P: Difficult airwayが予測され(Modified Mallampati分類III~IV)、口腔顔面外科手術を予定している患者で、軟性鏡を用いた意識下気管挿管(ATI-FB)を受ける患者
I: レミマゾラム(0.073mg/kg [R1S群] または0.093mg/kg [R2S群])+スフェンタニルによる鎮静。
C: デクスメデトミジン(0.6 μg/kg)+スフェンタニルによる鎮静(DS群)
O: 鎮静成功率(鎮静薬や局所麻酔薬の追加を必要とせず、気管挿管に患者が協力的であったか)

背景
レミマゾラムは超短時間作用型の新規ベンゾジアゼピン系鎮静薬で、迅速な回復、蓄積の少なさ、循環安定性、呼吸抑制の少なさ、前向性健忘効果、拮抗薬の存在などが利点として挙げられる。本研究では、覚醒下ファイバー挿管(ATI-FB)における有効性と安全性をレミマゾラムとデクスメデトミジンで比較した。

方法
ATI-FB予定の成人90例を無作為に3群に割り付け:
DS群:Dexmedetomidine 0.6 µg/kg + Sufentanil
R1S群:Remimazolam 0.073 mg/kg + Sufentanil
R2S群:Remimazolam 0.093 mg/kg + Sufentanil
主要評価項目は鎮静成功率。副次評価項目には、MOAA/Sスコア、挿管条件、挿管時間、健忘、呼吸・循環パラメータ、合併症などが含まれた。

結果
鎮静成功率:R2S群93.3%、DS群86.7%、R1S群58.6%(P=0.002)
挿管条件:R2S群とDS群がR1S群より良好(P<0.05)
挿管時間:R2S群が最短(P=0.003)
健忘効果:R2S群 > DS群(P=0.006)
呼吸・循環イベント(低酸素、低血圧、徐呼吸など):3群間で有意差なし

結論
R2S群(Remimazolam 0.093 mg/kg + Sufentanil)は、DS群と比較して同等以上の鎮静成功率、良好な挿管条件、短い挿管時間、より高頻度の健忘効果を示した。いずれの群も重篤な呼吸・循環抑制は認められず、R2S群は拮抗薬(フルマゼニル)も使用可能であることから、ATI-FBにおける有望な選択肢となり得る。

抄読会での議論・意見
1 担当麻酔科医に関して
ラベルされていない薬を同じ条件で投与するという形で盲検化するプロトコルになってはいたが、徐脈などからデクスメデトミジンかレミマゾラムかは判断がついた可能性がある。麻酔科医の挿管時快適度に関しては、単独の麻酔科による評価のため、個人の好みが反映された可能性がある。

2 レミマゾラムの使用方法として、ボーラス投与を使用した論文も多く見られるがなぜ持続投与なのか
一般的に意識下挿管では持続投与で緩徐に血中濃度があがるように推奨されている。急に血中濃度が上がることで呼吸抑制が強く出ることを予防するためと思われる

3 本研究の外的妥当性に関して
本研究では経鼻挿管をターゲットにしたものであり、意識下経口挿管ではまた異なった薬剤の選択を考えないといけないことに注意が必要である。麻薬と鎮静剤を併用しているが、併用することで呼吸抑制が強くでることもあるため、薬剤の使用量には注意が必要。

4 前向性健忘に関して
鎮静度の割に実臨床で感じる以上に前向性健忘が強くでており、患者快適度の向上につながっている。デクスメデトミジンにはない特徴であり、本薬剤を選択する理由の1つとなりうる。

文責:亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 山本 亮介

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔