2024.9.19 麻酔科抄読会
担当:初期研修医 矢代順哉
指導:植田健一
The Effect of Intrathecal Morphine on Postoperative Opioid Consumption in Patients Undergoing Abdominal Surgery for Gynecologic Malignancy: A Randomized Sham-Controlled Trial.
Anesth Analg. 2023 Sep 1;137(3):525-533.
doi: 10.1213/ANE.0000000000006358
研究目的
本研究は、婦人科悪性腫瘍のために開腹手術を受けた患者において、脊髄内モルヒネ(ITM)が術後のオピオイド消費を減少させるかどうかを検証することを目的としています。特に、ITMが術後の痛みを軽減し、オピオイドの使用量を削減し、患者の満足度を向上させるかを評価します。
PICOモデル
• P(対象患者): 婦人科悪性腫瘍の治療目的で開腹手術を受ける成人患者
• I(介入): 脊髄内に200μgのモルヒネを注入
• C(比較): 偽処置を受けたシャム群
• O(結果): 術後24時間のオピオイド使用量の減少、痛みの軽減、患者の満足度、術後の回復速度
方法
68名の患者を対象に、脊髄内モルヒネを投与する群と偽の処置を行う群にランダムに割り当て、両群の術後のオピオイド消費量や痛みの重症度を比較しました。主要評価項目は術後24時間の累積オピオイド消費量で、患者の満足度や術後合併症についても評価されました。
結果
ITM群では、術後24時間のオピオイド消費量がシャム群よりも有意に少なく、痛みの管理に対する患者の満足度も高い結果となりました。回復や重大な合併症に関しては、両群間で大きな差は認められませんでしたが、ITM群では早期の歩行が確認されました。
結論
脊髄内モルヒネは、婦人科悪性腫瘍の手術後に有効な鎮痛法であり、オピオイドの使用を減少させるだけでなく、患者の痛み管理に対する満足度も向上させることがわかりました。
Discussion
・凝固障害がある場合、硬膜外と髄腔内モルヒネで施行できる条件の違いはあるか?
→硬膜外は長期留置する事になるのでより施行のハードルが高くなる
・呼吸抑制の副作用が出現したタイミングはわかりますか?
→論文内で記載はありませんでした。
・髄腔内に入れるのがモルヒネだけの場合、局麻が入っている場合と違い実際に効果が出ているのかがわかりにくいかもしれない。
・この研究ではIV-PCAを必要としていない人にも投与を継続している可能性がある
文責:亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 大熊
このサイトの監修者
亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔