2024.10.24 麻酔科抄読会

担当:東 珠莉
指導:加納 美咲

Effect of time of day on outcomes in elective surgery: a systematic review
Arjen J.G.Meewisse, et al. Anaesthesia 2024 Aug 7.
doi: 10.1111/anae.16395.

【本論文の背景】
予定手術の開始時刻は患者だけでなく、術者の概日リズムにも影響を及ぼし手術成績にも影響を及ぼす可能性があります。
多くの国で予定手術の待機時間が増加する傾向にあり、夕方から夜間に予定手術を行うことへの関心が高まっているため、今回、予定手術の開始時刻とそれが臨床結果に与える影響について明らかにするために文献の系統レビューを行った。

【方法】
MEDLINEとEmbaseで”anaesthesia”, “surgery”, “circadian rhythm”で検索を行った。
主要評価項目は「すべての時点での死亡率」、副次評価項目は「周術期の合併症や出血量、在院日数、Pain Scaleなど」とした。

【結果】
レビューの対象となったのは合計21の研究で、その内訳は後向き観察研究が19、前向きコホート研究が1、ランダム化比較試験が1であった。
いくつかの後向き研究のでは日中よりも夜間の手術のほうが有意差をもって死亡率が増加するといった結果であったが、多くの研究では有意差を見出すことができなかった。
しかし、研究の質が低いものも含まれており、かつ研究ごとに患者背景や時間帯の定義などが異なるため、予定手術の開始時刻と死亡率・合併症発生率の関連性に関しては本レビューの結果からは一概にいうことはできない。

【Discussion Point】
東先生の私見として本研究の結果から、夕方の予定手術は死亡率の上昇と関連する可能性があるため、重症患者の症例は日中に施行するなど手術予定の組み方を考慮する必要があるかもしれないと結論づけていました。

Q:日中と夜間とで、ホルモン値の違いやそれに伴う合併症などの検討はされていたか。
A:サーカディアンリズムに関連して、血小板・凝固因子の活性化は日内変動があるため手術開始時刻と出血量との関連性はあるかもしれないが、その関連性を検討した研究は含まれていなかった。

Q:今回のレビューでは後向き観察研究の割合が多かったが、RCTを組むとしたらどのようにすればよいか。
A:本レビューに含まれる研究にも一つRCTがあり、THAを受ける患者を対象としたRCTがあるが、そのRCTではコンピュータを使用したランダム化が行われておりそれを参考にRCTは組むことはできると考える。

文責:亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 竹下 学

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔