注目論文:日本の単一施設での経気管支肺クライオバイオプシーによる間質性肺疾患診断の初期経験と鎮静の影響

日本における単一施設での経気管支肺クライオバイオプシー(TBLC)の実施経験が報告されました。本研究では、間質性肺疾患(ILD)診断におけるTBLCの初期経験、学習曲線、および鎮静薬が合併症発生率に与える影響を検討しています。約56例を超えると効率および生検成功率が向上することが確認されました。

Transbronchial lung cryobiopsy for interstitial lung disease: early experience, learning curve, and the impact of sedation on complication rates at a single centre in Japan
日本における間質性肺疾患診断のための経気管支肺クライオバイオプシーの初期経験、学習曲線、および鎮静の影響
Kaburaki S, Tanaka T, Kamio K, Tanaka Y, Kasahara K, Seike M.
BMC Pulm Med. 2024 Oct 29;24(1):540. doi: 10.1186/s12890-024-03359-1.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39472830/

背景
経気管支肺クライオバイオプシー(TBLC)は、間質性肺疾患(ILD)の診断において有望な手法として注目されています。本研究は、TBLC導入における初期経験、手技学習曲線、特に出血や気胸などの合併症発生率に対する鎮静薬の影響を評価することを目的としました。

研究デザイン
本後ろ向きコホート研究では、2021年4月から2024年3月に日本医科大学病院でTBLCを受けた119人の患者を対象としました。手技時間、合併症発生率、組織学的診断結果が評価されました。累積和(CUSUM)分析を用いて、手技時間と生検の成功率に基づく学習曲線を評価し、さらに鎮静薬の用量と出血リスクの関連性を調査しました。

結果
診断成功率は高く、97.5%の症例で肺胞組織が得られ、81.5%の患者において確定的な病理診断が可能でした。CUSUM分析により、約56例を超えると効率および生検成功率が向上することが確認されました。また、フェンタニルの用量が出血合併症の減少に有意に関連していました(オッズ比 0.51、95%信頼区間 0.27-0.97、p = 0.041)。TBLCはILD診断において安全かつ有効な診断手法であり、手技効率のための学習曲線は管理可能です。特にフェンタニルの用量が合併症予防において重要な役割を果たす可能性が示唆されましたが、この関係を明確にするためにはさらなる研究が必要です。本研究は、TBLCを標準的なILD診断アプローチとして導入することを支持し、安全性と有効性を確保するための適切なトレーニングと鎮静プロトコルの最適化の重要性を強調しています。

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔