2024.9.12 麻酔科抄読会

担当:竹原 由佳

Comparison of analgesic effect of pericapsular nerve group block and supra-inguinal fascia iliaca compartment block on dynamic pain in patients with hip fractures: a randomized controlled trial

Won Uk Koh, Hyungtae Kim, Yeon Ju Kim, Ji In Park, Hyun-Jin Yeo, Young-Jin Ro, Ha-Jung Kim
Reg Anesth Pain Med 2024;0:1-6 doi:10 1136/rapm-2024-105627

-股関節骨折患者の動的疼痛に対するPENGブロックと鼠径部上腸骨筋膜下ブロックの鎮痛効果の比較-

背景:股関節骨折患者の鼠径部上腸骨筋膜下ブロック(SIFICB)よりPENGブロックは運動神経の遮断がなく、動的疼痛に対する鎮痛効果が優れているのではないか?
本研究ではPENGブロックとSIFICBの動的疼痛軽減効果を比較した。

方法:2021年1月から2022年1月の期間で股関節骨折患者を対象とした前向きランダム化比較試験。選択基準は19歳以上、ASA -PS1〜4、股関節骨折に伴う動的疼痛NRS4以上の患者。Primary outcomeは末梢神経ブロックによる動的疼痛スコア(他動的に30度以上下肢挙上された時のNRSスコア)の減少。

結果:Primary outcome(動的疼痛の減少)に関しては、疼痛スコアがそれぞれSIFICB2.9±2.5、 PENG3.1±2.3 で、神経ブロックに対する患者の満足度は同程度であった。また、仰臥位から側臥位への体位変換時のスコアは2群間で同等であった。術後6時間、24時間、48時間における術後の動的および安静時疼痛スコア、術後鎮痛薬の投与は両群間に差はなかった。術後の運動機能、24時間後の歩行テスト、回復プロファイルも両群間で差はなかった。

結論:PENGブロックとSIFICBは、共に股関節骨折患者の動的疼痛に対して有効な鎮痛効果を認めた。動的疼痛と術後痛に対する鎮痛効果は2ブロック間で同等であり、運動機能や回復プロファイルなどの臨床的転帰に差は認められなかった。

質疑応答
・鼠径上での穿刺は腹腔穿刺などの合併症が増えるという報告はないか?
→深腸骨回旋動脈をメルクマールにする、もしくは大腿神経と平行に液性剥離した後に穿刺するのも一つかもしれない。

文責:亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 坂手彩子

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔