2024.9.17 麻酔科抄読会

担当:初期研修医 加藤 乃愛
指導:藤井 真理映

An Innovative Approach to Determine Programmed Intermittent Epidural Bolus Pump Settings for Labor Analgesia: A Randomized Controlled Trial

分娩鎮痛におけるプログラム化間欠硬膜外ボーラスポンプの設定を決定する革新的アプローチ:ランダム化比較試験
Munro A et al., Anesth Analg. 2024 Sep 1;139(3):545-554.

背景
分娩時の鎮痛管理では、プログラム化間欠硬膜外ボーラス(PIEB)が、連続硬膜外注入(CEI)に比べて優れた効果をもたらすことが報告されている。具体的には、局所麻酔薬の消費量の減少、痛みの発生頻度の減少、母体満足度の上昇などが挙げられる。しかし、PIEBポンプの最適な設定(次回ボーラス時間、ボーラス間隔、ボーラス量)は未だ確立されていない。この研究ではレスポンス・サーフェス・メソッド(RSM)を用いて、3つのPIEB設定(次回ボーラス時間、ボーラス間隔、ボーラス量)を最適化し、母体満足度、臨床医によるボーラスの必要性、PCEAの要求/投与比の3つの臨床アウトカムを同時にバランスよく最適化した。

方法
・二重盲検ランダム化比較試験
・初産婦、18〜45歳、ASA分類IIの妊婦、自然陣痛中、子宮口が7cm以下
・ロピバカイン0.1%とフェンタニル10 µg/mL
・統計方法:RSM(Box-Behnken Design)

結果
・次回ボーラス時間29.4分、ボーラス間隔59.8分、ボーラス量6.2 mL
・患者満足度:93.9% PCEAの要求/投与比:0.77 臨床医によるボーラスの必要性:0.29回

結論
RSMを用いることで、PIEBポンプの設定を効果的に最適化し、複数の臨床アウトカムをバランス良く管理できることが示された。今後の研究では、特定の臨床アウトカム(例:患者満足度)をさらに重視した設定の最適化が必要である。

Discussion
・患者アウトカムとして、運動神経ブロック、器械分娩率などがCADDの設定に応じてどのように変わったかがわからないため、患者満足度がどのような因子によって変動しているかが不明。
・帝王切開移行率はわからない。
・機械によるボーラスで満足できなかった場合に臨床医がボーラスすることになっているが、その場合の次の投与間隔が不明。
・通常のRCTと違って、RSMは因果関係を示すものではなく、最適化を目指す手法である。研究手法の限界には留意する必要がある。RSMでは適切なモデリングができることが重要であると思われるが、その妥当性を示すようなデータがない。

文責:亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 山本亮介

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔