USMLE Step2 CK 257点達成へ:フルタイム勤務中の挑み

後期研修医4年目の金です。この度、USMLE Step2 CKを受験し、257点を取得しました。目標にはわずかに届かなかったものの、フルタイム勤務を続けながらの挑戦でしたので、その経験をシェアさせていただきます。

私は専門性の高い臨床経験を積むと同時に臨床研究も行いたいため、長期的にアメリカで活躍することを視野に入れています。そのため、日本で麻酔科専門医を取得した後、アメリカのレジデンシープログラムに再度参加する計画を立てています。医学生時代にUSMLEの勉強を始め、6年生の際にUSMLE Step1とStep2 CSに合格しましたが、Step1の点数が思わしくなく、渡米を一度は諦めかけました。しかし、幸運にもStep1がPass/Fail制度に移行したため、再挑戦を決意しました。

以下に、受験に際して注意すべき点やアドバイスをシェアさせてください。

「一発勝負」の点数勝負
Step1がPass/Fail化した結果、マッチングにおいて唯一標準化できる指標がStep2 CKの点数となりました。麻酔科はアメリカでも非常に人気があり、外国医師がマッチするためには高得点が求められます。また、一度合格すると点数の上書きができず、不合格になるとその履歴が残るため、まさに「一発勝負」です。特に人気なレジデンシープログラムはCKの点数で足切りを行うため、点数が低いとどれだけ優秀でも応募書類がプログラムディレクターの目に入りません。徹底的な準備が不可欠です。

難化傾向
Step2 CKの平均点は北米医学生を基準として設定されているため、外国医師にとっては高い難易度となっています。過去には、国別の平均点が公表されたことがあり、一部の特殊な事情を除けば、アメリカの平均点は最上位に位置していました。この平均点が年々上昇しており、今年は249点に達しています。また、Step2 CKは幅広い臨床知識を問う試験である一方、最近では病理学や薬理学を問う問題が増加している傾向にあります。さらに、問題文が長文化しているため、時間制限が一層厳しくなっており、十分な注意が必要です。

試験内容の把握
Step2 CKでは、日本の医師国家試験と同じように臨床知識が問われるものの、内容や傾向が大きく異なるため、事前に必ず把握しておくことが重要です。内科や外科の知識に加え、小児、産科、精神科の知識も幅広く問われるほか、プライマリケア分野、特にワクチンや健康診断に関する問題も頻出します。最近の傾向として、医の倫理や医療統計、さらに医療の質向上(Quality improvement)に関する問題の比重が増しており、これらに対する対策が不可欠です。公式サイトには、出題分野の割合が公表されていますので、必ず確認するようにしましょう。

情報収集の重要性
日本の国家試験対策と同様に、まずは他の受験者と足並みを揃えることが重要です。市販の教科書をむやみに使用して勉強を進めると、本番で痛い目に遭う可能性が高いです。また、日本語の情報は非常に限られています。日本からの年間受験者数が少なく、情報が更新されていないことが多いです。古い情報に頼るのも避けるべきです。私は勉強を開始する前から積極的に情報収集を行い、Redditという掲示板を主に利用しました。Redditには、多くの合格体験記や模擬試験と本番の点数が公開されています。あまり閲覧しすぎると精神衛生上良くないため、他の受験者がどのような資料を使用し、どのように勉強しているかを中心に確認し、それを基に自分の勉強計画を立てました。

勉強資料の準備
知識の確立と問題演習目的でオンライン問題集のUWorldを解いた後、NBME模試を受けて本番に臨む受験者が大半です。
CK用のUWorldは現在4000問以上あり、一周するだけでも非常に時間かかりますが、多くの受験者が取り組んでいるため、疎かにしないことをお勧めします。UWorldの代わりにAmbossを使用する人も一定数いますが、どちらか一方で十分だと思います。ただし、本番の形式はまた違いますので、これらの問題集はあくまでも知識を取り入れる手段として捉えることが賢明です。
USMLEは過去問の再現が厳密に禁止されていますので、対策として、唯一手に入る過去問である公式のNBME模試を受けざるを得ません。CKの模試が現在6セット公開されており、1セットは200問で、全て受けると1200問に達します。かなりの量になりますが、問題形式や傾向が把握できます。
また、公式サイトで公開されている120問のサンプル問題も。本番に最も近い形式とされているため、必ず確認しておくべきです。
さらに、余裕のある受験者は、NBMEのClinical Mastery Series(CMS)という、アメリカ医学部定期試験用の科目別演習問題にも取り組んでいます。USMLEと同じ母体から出題で、問題が類似しているとされています。全てで約1000問あります。

自分に最適な対策を立てる
日本の医学部を卒業している以上、必要な学力は備わっていると考えます。それぞれの状況に応じて、他者を模倣する必要はなく、自分に最適な勉強方法を選びましょう。
私の場合、フルタイム勤務しながら勉強する必要があったため、まとまった時間を確保するのが難しい状況でした。効率的に学習を進めるのが得意ではないと自覚していたため、ある程度「量」で勝負しようと考えました。実際には、UWorld、NBME模試とCMSを複数回解き、さらに間違えた問題を含め、合計で15,000問の演習をこなしました。勤務終了後に気力が尽き、集中力を保つのが困難でしたが、試行錯誤の末、早朝に問題演習を行い、夜に知識の整理をすることが最も効率的だと感じました。
Ankiというアプリを用いて記憶強化を図る受験者も多いでしょう。特に既存の暗記カードデックが複数存在し、最も網羅的なものでは数万枚に及びます。私はこの方法が自分には合わず、数ヶ月間頑張ってみましたが途中で挫折しました。しかし、途切れ途切れの勉強では知識の定着が難しいと感じたため、間違えた問題や苦手な知識を中心にカードを自作し、Ankiを利用しました。直前期には毎日1時間以上集中してカードを暗記したことが効果的だったと感じています。これからのStep3の勉強でも同様の方法を取る予定です。
また、ChatGPTの活用も有効です。勉強資料に最新ガイドラインが反映されていなかったり、調べるのに時間や手間がかかったりする際には、ChatGPTに質問することで効率的に情報を得ることができ、勉強の時短に大いに役立ちました。

長時間勉強の「基礎体力」を養う
本番の試験は、休憩45分を含めて合計9時間の長丁場です。普段から長時間勉強に慣れていないと、突然マラソンを走るような状況になりかねないため、長時間勉強の「基礎体力」を養っておくべきです。私は丸一日の休みがあれば、朝から晩まで集中して勉強をしていました。NBME模試を受ける際も、できる限り本番と同じ状況をシミュレーションしました。また、体調不良や寝不足の状態でも対応できるよう、あえてそういった状態で模試を受けることもありました。

健康管理
フルタイムで働きながらこのような過酷な試験に臨む以上、相当なストレスがかかります。睡眠、食事、運動はもちろんのこと、ストレスのはけ口や心の支えになるものを持っておくと良いです。私は、睡眠の質が悪く、直前には連日眠れないことが多かったため、事前に専門の先生と相談して対策を講じました。
また、SNSの利用は気が散るため、スマートフォンからすべてのSNSアプリを削除しました。勉強の合間には、SNSに費やす時間を家事や自炊に充てることで、良い気分転換となりましたので、お勧めです。

直前と当日の対策
緊張や不安で前夜に一睡もできなかった場合、当日には集中力が切れてしまい、十分な力が発揮できない可能性があります。そのため、私は前日早朝に起床し、ジムで筋力トレーニングを行い、体を疲れさせて眠りやすくしました。
当日の休憩時間の使い方も事前に計画しました。食事をしっかり摂ることで眠くなるのを防ぐため、低GI食品を中心にエネルギーを摂取し、ブロックごとに短い休憩を取るようにしました。また、緊張をほぐすために、こまめにストレッチを行いました。
テストセンターは御茶ノ水のPrometricを選びました。広々として使いやすく、スタッフの方々も親切に対応してくださり、落ち着いて試験に臨むことができました。

最後に、私を支えてくださった亀田麻酔科の皆様に深く感謝申し上げたいと思います。皆様のご協力とご理解のおかげで、勉強時間を確保することができました。特に、有給休暇の取得を快く認めていただき、私が担うべき業務にさりげなく手を差し伸べてくださったことには感謝の念に堪えません。挫けそうな時には励ましの言葉をかけてくださったり、試験後には温かいお疲れ様会を開いていただいたり、点数発表の際には、深夜遅くまで医局に残り一緒に結果を見守ってくださるなど、皆様の支えがあったからこそ、今回の結果を達成することができました。本当にありがとうございました。

今、ようやくスタートラインに立った気持ちです。これからも多くの試練や困難が待ち受けていることでしょうが、亀田麻酔科の皆様の信頼や励ましを胸に、迷うことなく前進してまいりたいと思います。

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔