2024.6.13 麻酔科抄読会

担当 松本
指導 吉沼

Comparison of the success rate of tracheal intubation between stylet and bougie with a hyperangulated videolaryngoscope: a randomised controlled trial
D. Eum, et al.,Anaesthesia 2024 Jun;79(6):603-610. doi: 10.1111/anae.16202.

背景
hyperangulated videolaryngoscopeはスタイレットやブジーを使用することで、気道確保が困難な場合の気管挿管成功率を上げるとされる。これまでの先行研究では、施設背景や使用する喉頭鏡の種類等にばらつきがあり、スタイレットとブジーのどちらがより挿管成功率を上げるのか議論があった。本研究は、待機的手術における挿管リスク因子のある気管挿管に対するhyperangulated videolaryngoscope下での、ブジーとスタイレットの有用性を比較したRCTである。

方法
P 20歳以上の予定手術を受ける、挿管困難リスク因子を1つ以上持つ患者
I 初回の挿管にブジーを使用
C 初回の挿管にスタイレットを使用
O 1回目の施行での120秒以内の挿管の成功
Secondary outcomeは2回目、3回目の施行での挿管の成功率、挿管時間、咽頭痛、嚥下障害、嗄声の発生率とした。

結果
166人がinclusion criteria を満たし1:1に無作為に割り付けされた。挿管困難予想因子は93人(56%)は1つ、58人(35%)は2つ、15人(9%)は3つ以上持っていた。Primary outcomeについては、スタイレット群に割り当てられた患者と比較して、ブジー群に割り当てられた患者で有意に高かった。(それぞれ81/83(98%)対73/83(88%)、p = 0.032)。Secondry outcomeについては、挿管時間はブジー群で有意に長かった。合併症発生率は両群で有意な差は見られなかったが、嗄声のVASスコアはブジー群で有意に高かった。

結論
挿管困難な患者においてhyperangulated videolaryngoscopeでの挿管の際には、スタイレットに比べブジーの方が1回目の挿管の成功率は高かった。

抄読会でのDiscussion

  • ブジーは素材が柔らかくスタイレットと比べ挿管に適した角度に曲げて維持することが難しいため、スタイレットに比べその点では挿管に不利だった可能性がある。
  • 本研究で使用されたGlidescope ®は専用のスタイレットが販売されているが、本研究で使用されたスタイレットが専用品であったか不明である。もし専用以外のスタイレットであった場合、正しくGlidescope ®を活用できていない可能性があり、研究結果に影響した可能性がある。
  • 挿管実施者の経験が不明である。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 松本

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔