2024.05.30 麻酔科抄読会

担当:初期研修医 花田 剛郎
指導:柘植 雅嗣

A randomized, controlled clinical trial comparing remimazolam to propofol when combined with alfentanil for sedation during ERCP procedures

Dong SA, Guo Y, Liu SS, et al. J Clin Anesth. 2023;86:111077.
doi:10.1016/j.jclinane.2023.111077

本研究はERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)施行中の鎮静において、レミマゾラムとプロポフォールを比較したランダム化比較試験で、研究の目的は、アルフェンタニルと併用したレミマゾラムとプロポフォールの安全性と有効性を評価すること。

P: ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を受ける予定の成人患者(ASA I-III)。
I: レミマゾラムとアルフェンタニルの併用による鎮静 250人。
C: プロポフォールとアルフェンタニルの併用による鎮静 255人。
O: 主要アウトカム: 低酸素状態(SpO2 < 90% が10秒以上続く)の発生率。副次アウトカム: 気道介入の必要性、低血圧の発生率、患者の満足度、その他の鎮静関連の副作用(例:悪心、嘔吐、心血管系の副作用)。

結果
レミマゾラム群では9.6%の患者が低酸素状態を示し、プロポフォール群では15.7%が低酸素状態を示した(p=0.04)。低酸素状態による気道介入の必要性もプロポフォール群の方が高かった(p=0.04)。さらに、レミマゾラム群ではプロポフォール群よりも低血圧の発生率が低く(p<0.001)、患者の満足度も高い結果となった。手技時間はレミマゾラム群で長くなったが、これは疾患の複雑さによるものだった。

結論
レミマゾラムはプロポフォールと比較して、呼吸抑制の発生率が低く、血行動態の安定性に優れていることが示された。このため、ERCP施行中の鎮静において、安全かつ有効な選択肢となり得ることが示唆される。今後の研究では、異なる患者層やプロポフォールと少量のフェンタニルを併用した場合との比較が必要である。

当科でのディスカッション
Q. 鎮静の尺度は何を使ったか?
MOAA/Sを使用。僧帽筋をつねったり、揺らしたり、大声で反応があるかどうかで意識レベルを評価するスコア。

Q. T0-5までの経過はなんでしょうか?
T0が麻酔導入前でT1が麻酔導入後1分、T2が内視鏡が口腔を通過した時点、T3が内視鏡が口腔を通過してから5分後、T4が内視鏡が口腔を通過してから10分後、 T5が内視鏡が口腔を通過してから15分後

Q. この手技は挿管しないで施行されているのか?レミマゾラムもプロポフォールも多い気がしますが。
気道確保はしていない。鎮静薬などが少なかったせいだと思う。

Q. 姿勢を直すというのはどういうポジションからどういうポジションに?
それは記載なく、舌根沈下を解除する姿勢変化だと解釈した。

亀田総合病院 麻酔科 専攻医 大熊 秀彦

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔