2024.04.16 麻酔科抄読会
担当:中澤 遥
Efficacy of Single-Bolus Administration Remimazolam During Induction of Anesthesia in Patients Undergoing Cardiac Surgery: A Prospective, Single-Center, Randomized Controlled Study
Sou-Hyun Lee, MD, PhD, et al. Anesthesia & Analgesia February 05, 2024.
doi:10.1213/ANE.0000000000006861
背景:レミマゾラムはプロポフォールより循環動態への影響が少なく、ミダゾラムと比べ効果発現が早く、効果遷延が少ないとされる。一方で麻酔導入においてレミマゾラムは持続投与することが推奨されるが、意識消失までの時間が長く、ボーラス投与に比べ使用料が過量になることが懸念される。本研究では、心臓手術の全身麻酔導入におけるレミマゾラムのボーラス投与と持続投与の血行動態への影響や意識消失までの時間を比較した。
方法:本研究は2022年4月から5月に、Asan Medical Centerで行われた、単施設・前向きランダム化比較試験である。
P:20~80歳のASA PS II-IV 予定心臓手術を受ける60人の患者が20人ずつ3群へ割付けられた。
I: 麻酔導入時にレミマゾラム0.1mg/kgまたは0.2mg/kgでボーラス投与
C: 麻酔導入時に6mg/kg/hで持続投与
O:投与から呼名に対する反応消失までの時間( Time to loss of responsiveness :time to LoR)をPrimary outcome、心拍数、収縮期・平均・拡張期血圧、BISの変化をSecondary outcomeとした。
結果:Time to LoRの平均値 は、持続投与群:137±20秒、0.1mg/kg,ボーラス群:71±35秒、0.2mg/kg ボーラス群:48±9秒であり、3群間の有意差が見られた(P<.001)。2群間の平均値の差の比較では持続投与群 と 0.2mg/kg ボーラス群の間で最も大きな差が見られた。
Secondary outcomeについてはBIS以外の項目では有意差は見られなかった。BISについては、 持続投与群と比較して0.2mg/kg ボーラス群では投与から3分までのBISが有意に低く、0.1mg/kg ボーラス群では投与から2分までのBISが有意に低かった。
結論:心臓手術の麻酔導入において、0.2mg/kg ボーラス投与は3群の中で最も短時間で効果発現を得ることができ、循環動態に影響を与えにくい、理想的な導入方法である可能性がある。
抄読会でのDiscussion:
・サンプルサイズが小さく、血圧や心拍数の変動がないとは言い切れない。
・低心機能の患者にも0.1mg/kgや0.2mg/kgのボーラス投与が安全であるか不明である。
・肥満患者の場合、投与量は理想体重や実体重など何を指標にすればいいか不明である。
・レミマゾラム投与開始から3分間に血圧低下は全くなかったのか?
→細かい言及はなかったが、血圧低下の有意差は見られなかった。
・対象患者の元々の心機能や弁膜症の既往は?
→EFは3群間で明らかな有意な差はなかったが、弁膜症については詳細な記載はなかった。
弁膜症の有無で薬剤の血液循環にも大きく影響するため考慮が必要である。
・持続投与群では持続開始時からの時間を測定しているが、ボーラス群はボーラス投与操作開始時からの時間を測定しており、ボーラス量を投与完了するまでにタイムラグが生じている可能性がある。
・Time to LoRまでの総投与量には差があったか?
→有意な差はなかった。
・投与時の操作音などで、意識消失の評価者も持続投与かボーラス投与か気づく可能性があり、盲検化が不十分であった可能性がある。
亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 松本
このサイトの監修者
亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔