2024.04.09 麻酔科抄読会

担当:河野 宏之

The analgesic effectiveness of perioperative lidocaine infusion for acute and chronic persistent postsurgical pain in patients undergoing breast cancer surgery; a systematic review and meta-analysis

Br J Aneasth. 2024; 132: 575-587.

背景:乳がんは女性で最も多い癌であり、術後慢性痛(chronic persistent postsurgical pain:CPSP)の有病率56%以上とされている。リドカイン静脈内投与はCPSPの予防に効果的とされているが、一方でそのエビデンスは乏しい。今回のレビューとメタアナリシスではその有効性の評価を行なった。

研究デザイン:乳がん手術を施行した17歳以上の患者における周術期リドカイン注入(投与方法に制限なし)と標準鎮痛を比較するランダム化試験。プライマリアウトカムは3ヶ月及び6ヶ月のCPSP発生率、その他のアウトカムには術後1, 6, 12, 24 時間後の安静時痛、0-24, 25-48時間内の鎮痛薬投与量、回復の質、オピオイド関連の合併症、リドカイン関連の合併症を含めた。2023年2月16日までの1039例(リドカイン518人、対照群521人)を含む13の試験で解析を行なった。

結果:対照群と比較して、リドカイン群は3及び6ヶ月後のCPSPを改善させなかった。
また、術後1時間のPain scoreと術後24時間の経口モルヒネ換算量の減少も意味のある閾値まで達しなかった。

結論:周術期のリドカイン静注は乳がん術後のCPSPを減少させない。周術期の鎮痛目的やCPSP予防としてのリドカインの常用は、今回の患者群では推奨されない。

Q: 試験ではほとんどが術中持続投与を行っているようだったが、単回ボーラス投与でも効果は得られないのか。
A: 半減期が短いので単回の投与ではより効果が得られにくいと思われる、また治療域と中毒域の調節も難しくなるのではないか。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 坂手 彩子

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔