2024.2.15 麻酔科抄読会

この論文は、Surgical Co-managementモデルが整形外科および脳神経外科の患者の医療に及ぼす影響を評価する研究です。
Population: 整形外科および脳神経外科の患者(Surgical Co-managementモデル導入前後の患者)
Intervention: Surgical Co-managementモデル
Comparison: 従来のコンサルテーションモデル
Outcome: 合併症、入院期間、30日再入院率、他科コンサルトの数、医療費、患者と医療従事者の満足度

2012年8月に、従来のコンサルテーションモデルからSurgical Co-managementモデルへの移行が、Stanford medical centerで実施されました。この研究の目的は、Surgical Co-managementの介入が合併症、入院期間、30日再入院率、他科コンサルテーションの数、医療コストの減少、および患者の満足度の増加と関連しているかどうかを検証することでした。
研究デザインは、介入群(Surgical Co-management導入後の患者)と対照群(Surgical Co-management導入前の患者および別の外科グループの患者)で介入前後の成果の変化を比較するDifference in Difference designを用いています。主な成果指標には、合併症の発生率、入院期間、30日再入院率、他科コンサルテーションの数、医療コスト、患者の満足度が含まれます。
結果は、Surgical Co-management介入が医療合併症の発生率、入院期間、30日再入院率の有意な減少、他科コンサルテーションの数の減少、医療コストの削減に寄与しましたが患者満足度には有意な変化は観察されませんでした。
この研究は、Surgical Co-managementモデルが外科患者のケアの質を改善し、合併症のリスクを減少させ、ケアコストを削減する可能性があることを示唆しています。また、多職種チームによる日常的なラウンドや患者ケアの調整強化が、これらの成果に貢献する重要な要素であることを強調しています。

Surgical Co-managementはアメリカでは一般的に認知されつつある管理方法のようですが、日本ではまだ導入されているところはなさそうです。日本とアメリカでは医療費の計算方法など違いがあるのでSurgical Co-managementをそのまま導入したとしても本研究と同様な医療コストの削減ができるかは不明です。しかし、今後併存症を複数抱えるご高齢の患者様の手術件数が増えると予想される当院では合併症の減少という面で日本式のSurgical Co-managementのあり方を模索し始めても良いのではないかと感じた論文でした。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 大熊

当日の質疑応答では、Difference in Difference designに関する質問やイギリスの医療制度のUniversity群/Private群についての質問、合併症減少/コスト削減に関する質問、費用対効果に関する質問、Surgical Co-managementモデルをもちいている病院が他にあるのかどうかといった質問がありました。
大熊先生が神経内科専門医として麻酔科の研修を始めて2年が経ちましたが、いつも新しい視点や切り口でとても刺激を受けています。今後、術前から術後にわたるまで、内科的なケアも充実させ、患者さんの合併症発生率の減少やケアの質の向上、予後の改善など当院なりの形が出来上がる日が来るのを楽しみにしています!
大熊先生ありがとうございました。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 荻野

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔