2024.2.22 麻酔科抄読会

Effect of BIS-guided anesthesia on emergence delirium following general anesthesia in children: A prospective randomized controlled trial

担当:後期研修医 山本 亮介
指導:杉山 大介

目的: 覚醒時せん妄(Emergence delirium:ED)は、小児麻酔における術後合併症のひとつであり、知覚障害や精神運動障害を特徴とし、術後の回復に悪影響を及ぼす。吸入麻酔の使用はEDの高い発生率と関連しているため、BISモニターを用いて全身麻酔の深さを調整することでEDの発生率を減少させることができるかどうかを検討した。
Primary outcome: PACU滞在中のED発生率
Secondary outcome: PACU滞在10分後および30分後のPAEDスコアと、EDに対するレスキュー治療の必要率
患者: 無作為、前向き、二重盲検、全身麻酔下で内視鏡的アデノイド切除術を受ける3–8歳の男女計163例
方法: 全身麻酔導入直後、患者の額にBIS電極を装着した。介入群では、BIS値が40~60になるように麻酔深度を調整した。対照群では、セボフルランの投与量はMACが1.0–1.2になるように調整した。介入群には86例、対照群には77例の小児が無作為に割り付けられた。PACU滞在中、23.3%(38/163例)がPAEDスコア>10のEDを発症した(対照群35.1%(27/77例)、介入群12.8%(11/86例)(p=0.001))。PAEDスコアも対照群に比べ介入群で10分後(p<0.001)と30分後(p<0.001)に低かった。レスキュー治療の必要性は群間で差がなかった(p=0.067)。
結論: BISモニタリングによる麻酔深度の個別化は、小児のED予防に有効な方法である。

Discussion
Q:抜管基準は?
抜管基準は詳細な記載がない。呼気終末セボフルランの使用量に差があったのにもかかわらず手術終了からPACUに搬送されるまでの時間に有意差がなかったことから、急速に覚醒させた可能性がある。臨床研究登録情報には、急速な覚醒がEDのリスクになるのではないかという疑問の記載があり、それを調べることも目的であったように思う。
Q:なぜ群間の人数差が1割もあるのか?
A:臨床研究登録を見ても記載がなく理由はわからないが、ランダムに割り付けられたと記載されている。
Q:PACUの評価者は介入群を知っているのか?
A:PACUの看護師は研究チームに入っていなかったが、介入群は前額部をみればBISが貼ってあったことがわかるので評価に影響した可能性がある。本当にランダム化するなら対照群にもBISを貼って、数値を計測しつつも麻酔科医には見えないようにする工夫をするべきであった。
Q:小児におけるBISインデックスの信頼性は?
A:この論文はBISインデックスの小児の妥当性を調べたものではないが、小児においてもBISの有用性を調べた研究は増えてきている。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 山本 亮介

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔