2023.11.30 麻酔科抄読会

担当:菅野先生/河野先生

Santa Cruz Mercado LA, Liu R, Bharadwaj KM, Johnson JJ, Gutierrez R, Das P, et al. Association of Intraoperative Opioid Administration with Postoperative Pain and Opioid use. JAMA Surg. (2023) 158:854–64.

<目的>
術中のオピオイド使用量と術後の疼痛・術後オピオイド必要量の関連を明らかにすること

<方法>
2016年4月から2020年3月までに全身麻酔による非心臓手術を受けた成人患者について、マサチューセッツ総合病院の電子カルテデータを評価した後向きコホート研究である。帝王切開手術を受けた患者、局所麻酔を受けた患者、フェンタニルまたはヒドロモルフォン以外のオピオイドを投与された患者、集中治療室に入院した患者、術中に死亡した患者は除外した。術中のオピオイド曝露が主要転帰および副次的転帰に及ぼす影響を明らかにするため、傾向で重み付けしたデータセットに統計モデルを当てはめ、2021年12月から2022年10月までのデータを解析した。

<介入>
術中フェンタニルおよび術中ヒドロモルフォンの平均効果部位濃度を、薬物動態/薬力学モデルを用いて推定した。

<主要評価項目>
麻酔後治療室(PACU)滞在中の最大疼痛スコアと、PACU滞在中に投与されたオピオイドの累積投与量(モルヒネ・ミリグラム当量(MME)で定量化)とした。疼痛とオピオイド依存に関連する中長期的転帰も評価した。

<結果>
研究コホートには、手術を受けた計61 249人(平均[SD]年齢、55.44[17.08]歳;女性32 778人[53.5%])が含まれた。術中のフェンタニルおよび術中のヒドロモルフォンの増加は、いずれもPACUにおける最大疼痛スコアの低下と関連していた。両方の曝露はまた、PACUにおけるオピオイド投与の確率および総投与量の減少とも関連していた。特に、フェンタニル投与量の増加は、制御不能な疼痛の頻度の減少、3ヵ月後に報告された新たな慢性疼痛の減少、30日・90日・180日後のオピオイド処方の減少、新たな持続的オピオイド使用の減少と関連しており、副作用の有意な増加は認められなかった。

<結論>
一般的な傾向とは逆に、手術中のオピオイド投与を減らすことは、術後の疼痛とオピオイド消費を増加させるという意図しない結果をもたらす可能性がある。逆に、手術中のオピオイド投与を最適化することで、長期転帰の改善が達成されるかもしれない。

亀田総合病院 麻酔科 専攻医 藤井

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔