2023.9.28 麻酔科抄読会

担当:安藤先生/植田先生

Enlund M, Berglund A, Enlund A, Lundberg J, Wärnberg F, Wang DX, et al.. Impact of general anaesthesia on breast cancer survival: a 5-year follow up of a pragmatic, randomised, controlled trial, the CAN-study, comparing propofol and sevoflurane. EClinicalMedicine. 2023;60:102037.

<目的>
乳がん手術において、プロポフォールによる全身麻酔がセボフルランによる全身麻酔と比較し5年生存率が少なくとも5%有利であるという仮説を検証すること

<方法>
浸潤性乳癌手術が予定されている乳癌患者2118人の中から、個別のインフォームド・コンセントの後、1764人がこのオープンラベル、単盲検、無作為化試験にリクルートされ、スウェーデンの4つの病院と3つの大学病院、および中国の1つの大学病院で実施された。対象患者のうち354人が除外されたが、これは主に参加拒否によるものであった。患者は、プロポフォール静脈内投与またはセボフルラン吸入による全身麻酔維持のいずれかに、順列化されたブロックにおいて1:1の割合で、コンピュータにより無作為に割り付けられた。麻酔、手術、腫瘍組織、人口統計学に関するデータが登録され、主要エンドポイントは5年全生存率とした。データはKaplan-Meier生存曲線と、ITTとper-protocolの両方によるCox単変量回帰分析に基づくハザード比として示した。

<結果>
2013年12月3日から2017年9月29日までに対象となった1764例のうち、1670例が解析に残った。少なくとも5年間生存した人数は、プロポフォール群で773/841例(91.9%(95%CI 90.1-93.8))、セボフルラン群で764/829例(92.2%(90.3-94.0))であった(HR 1.03(0.73-1.44);P = 0.875)。プロトコルごとの解析における結果は733/798例(91.9%(90.0-93.8))と653/710例(92.0%(90.0-94.0))であった(HR = 1.01(0.71-1.44);P = 0.955)。 追跡期間中央値76.7ヵ月後の生存期間では、両群間に差は認められなかった(HR 0.97、0.72-1.29;P = 0.829)。

<結論>
乳癌手術における全身麻酔は、プロポフォールを用いた場合とセボフルランを用いた場合で全生存期間に差は認められなかった。

亀田総合病院 麻酔科 専攻医 藤井

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔