新人スタッフとしての心境

アイオワ大学麻酔科の吉村達也です。2023年8月から心臓胸部麻酔部門のファカルティとして勤務しています。私のメンターである植田健一先生からの依頼を受け、寄稿させていただきます。新人スタッフとしての現時点での心境をお話しします。

ここまでの経緯
浜松医科大学卒業後、臨床留学で有名な帝京大麻酔科に入局しました。研修の傍らECFMGを取得し、オーストラリアで臨床フェローを経験しました。その後、2009年から1年間、アイオワ大学で心臓胸部外科麻酔フェローを務めました。当時のスタッフで、現在亀田総合病院副院長である植田健一先生に指導を受けました。日本に帰国後、渡米するまで神奈川県の新百合ケ丘総合病院で勤務しました。渡米に際し、中学3年生と小学校3年生の息子たちの転校を含む家族会議を経て、全員で移住しました。

ライセンスに関して
13年ぶりにアイオワにスタッフとして戻ったわけですが、アメリカの麻酔科専門医資格を持たないため、アイオワ州のスペシャルライセンスが必要でした。ECFMGを持たなくてもスペシャルライセンスで勤務しているファカルティが内科や外科に多数いることには驚きました。大学にとって必要な人材であれば、USMLEも必要ないのかもしれません。

新人ファカルティとして
8月は主にオリエンテーションをこなし、9月はオンコール無しで仕事に慣れることに専念しました。13年前に働いたとはいえ、日本の病院での経験とは異なるため、レジデントや麻酔看護師と一緒に麻酔を行うことに慣れるのに時間がかかりました。特に言語の壁もあり、コミュニケーションにはエネルギーが必要でした。最初は指導や監督よりも、彼らから麻酔業務のルーチンを学ぶことが多く、「早く信頼されるスタッフになりたい」と思っていました。一般症例でも、時には自分のスキルが役立つ場面があります。心臓や胸部外科の麻酔ではレジデントに教えられることも増え、「麻酔を20年やってきたのだから、コツコツとやっていれば大丈夫!」と自分に言い聞かせています。

一番苦労したのは、サテライト手術室への行き方を覚えることでした。サテライトはいくつかに分散しており、各々の患者の術前エリアも異なり、複雑です。初めの頃は同僚に聞いたり、下見をしていました。

移籍して4ヶ月ですが、様々な人との出会いや状況を経験し、今後の展望を考える余裕が出てきました。最近では、レジデント1年目を対象に分離肺換気のハンズオントレーニングを主催しました。この分野は得意で、セットアップやトレーニング内容も自分で準備し、参加者に楽しんでもらえました。

最後に
アイオワ大学病院麻酔科の状況についてお話しします。病院の増床計画に伴い、手術件数増加が期待され、麻酔科医のリクルートが盛んです。最近はブラジルやトルコの麻酔科医が複数採用されました。現在は花田諭史先生と私の2名体制ですが、チームジャパンの勢力拡大を目指しています。どなたかアイオワで一緒に働きませんか?

アイオワ大学 麻酔科 吉村達也

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔