2023.05.11 麻酔科抄読会

タイトル:心臓手術患者におけるロクロニウムの拮抗と術後の筋弛緩再発:スガマデクスの用量設定研究
https://doi.org/10.1097/ALN.0000000000004578

サマリー:
背景
ロクロニウムを拮抗するスガマデックスの用量は、train-of-four(TOF)カウント≧2の場合は2mg/kg、post-tetanic-count(PTC) ≧1、TOFカウント<2の場合は4mg/kgであるとメーカーが推奨している。この用量設定研究の目的は、心臓手術の終了時にTOF比≧0.9となるようにスガマデックスの投与を行いTOFモニタリングとスガマデクスとの用量反応関係、ICUにおいて筋弛緩を継続モニタリングして筋弛緩再発(Recurrent paralysis)の確認を行うことだった。仮説は、多くの患者は推奨量より少ない量のスガマデックスを必要とするが、一部の患者はそれ以上の量を必要とし、麻痺の再発は起こらないというものであった。

方法
心臓手術中、筋電位式TOFモニターを用いて筋弛緩をモニタリングした。ロクロニウムの投与は麻酔チームの裁量に任された。胸骨閉鎖開始後に、TOF比≧0.9が得られるまで、5分ごとに50mgずつスガマデックスを投与した。筋弛緩モニタリングは、術後ICUで、抜管前に鎮静が中止されるあるいは最大7時間まで、ICUで筋電図を用いて行った。

結果
97人の患者が評価された。TOF比≧0.9に必要なスガマデックスの用量は、0.43~5.6mg/kgだった。筋弛緩の深さと拮抗に必要なスガマデックスの用量には統計的に有意な関係があったが、必要量に大きなばらつきがあった。97人中84人(87%)は推奨量より少ない量で済み、13人(13%)はそれ以上の量を必要とした。2名の患者は、筋弛緩再発があり、スガマデックスの追加投与を必要とした。

議論
筋弛緩モニタリングを行わずにスガマデクス投与後のTOF比<0.9の割合は約10%であることはすでに報告されている。
当研究は非常にコントロールされた環境で筋電位式モニタリングを用いて、スガマデクスの用量について詳しく調べた結果、13%の患者にはガイドライン推奨量よりも多くスガマデクスが必要となった。
スガマデクスで拮抗する際にモニタリングが必要不可欠であることを再度確認できた。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 金

このサイトの監修者

亀田総合病院 副院長 / 麻酔科 主任部長/亀田総合研究所長/臨床研究推進室長/周術期管理センター長 植田 健一
【専門分野】小児・成人心臓麻酔