JB-POT合格体験記②

麻酔科後期研修医2年目の金顓です。 この度は2022年の日本周術期経食道心エコー認定試験(JB-POT)に合格しましたので、体験記を書かせていただきます。

私のTEE経験が浅く、受験までの開心術症例は40例ほどしかありませんでした。
亀田麻酔科では基本後期1年目の後半から開心術に入り始めています。最初はもちろんエコーをする暇もなく、全身管理と手術の流れに慣れるのに必死だったので、エコーに触れるのは10例ほど経験したあとでした。JB-POTやAdvanced PTEeXAMの資格を持っている先生も、アメリカで心臓麻酔を専門に長く勤めていた先生がいますので、麻酔教育に関しては文句なしです。術前経胸壁心エコー評価もまともに読めない頃、植田部長先生は予定開心術の前日に一緒に心エコーの動画を見て、この心臓が今どういった状態か説明してくれました。レポートに書いてある評価は敢えて見ずに、当日のTEE所見での答え合わせを、よく一緒にしてきたのは非常に印象に残っています。そのおかげで、エコー所見と循環動態の理解が深まりました。
また、亀田にあるTEEシミュレーターで、基本ビューの出し方や解剖の理解にかなり役立ちました。

亀田麻酔科ではみんな目指すところがそれぞれで、家族、育児に時間を使ってもいいですし、仮に医学以外に目標があれば可能な限り応援してくれるところで、とても働きやすいです。試験に関しても決して強要もしません。しかし、臨床でのトレーニングだけだと物足りないのでJB-POTには合格しません。私は亀田の先輩方の経験談とアドバイスをもとに、同僚と一緒に対策をしました。ネットではたくさんの対策や体験記がありますので、ぜひ併せてご参考いただければと思いますが、私が思うには一番大事なのが動画問題対策、エコー原理の勉強と講習会です。

動画問題はエコー経験の少ない方にはかなり厄介な存在です。本番の試験には38問があり、1問に2-3分ほどの長い動画があるため時間に余裕がない上、難問が多く6割が取れなかったらいくら筆記問題ができても不合格になります。私は「周術期経食道心エコー 連問式症例問題集」という教科書を使って一日1-2問のペースでなんとか動画問題に慣れましたが、それ以上の対策をする時間はありませんでした。そのせいで、動画問題はかなりギリギリでした。もっと余裕を持って合格したい場合はきちんと対策をしておいたほうが良いかもしれません。 

続いてはエコー原理の勉強です。筆記の100問中、エコー原理やアーチファクトに関する問題は3分の1ほどと、かなりのボリュームで出題されました。私はまずDr.SONOの公開講座「超音波の基礎」というサイトで基礎知識と理解をした上で、「周術期経食道心エコー図―効率的に学ぶために」という問題集で演習しながら、講習会にある関連講習をひたすら視聴しました。

最後に講習会です。必ず視聴して、直前も講習会で勉強したほうがいいと強く勧められて私は半信半疑でしたが、振り返ってみるとそれが正しい対策法となります。JB-POT対策用の教科書がほとんど古いもので、最近臨床でもよく遭遇するImpella、TAVIやWatchmanの話も載っていません。講習会は年2回あり、さらに直前講習会もあります。その内容が出題の範囲でもありますし、それを基本にしてさらにガイドラインや教科書などで勉強すればベストかと思います。

JB-POTは一つの試験に過ぎません。JB-POTの合格こそ、経食道心エコーの勉強のスタートラインを切った気がします。経食道心エコーを駆使して心臓麻酔時の臨床力を上げるにはもっと努力が必要だと強く感じています。最後に、私を応援・信頼してくれた亀田麻酔科、手術センター及び心臓血管外科の皆様に感謝をお申し上げます。

麻酔科 後期研修医 金 顓

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療