ASA annual meeting 2022に参加して(1)

当院麻酔科専攻医2年目の栁と申します。この度、米国麻酔科学会(ASA)の年次集会で発表しましたので、学会に参加して感じたことを記させていただきます。今後国際学会で発表される方の参考になれば幸いです。

私は、Medically Challenging Caseの部門でポスターディスカッションを行いました。割り当てられたモニターに10分間ポスターが表示され、その間にショートプレゼンと質疑応答を行いました。モニターの前には、司会者、発表者、その関係者を含め5,6人しかいませんでしたが、会場は騒々しくマイクもないため、声を張る必要がありました。原稿を丸暗記し、想定したいくつかの質問に対する答えを準備して本番に望みました。しかし、nativeの発音は想像よりも聞き取ることが難しく、苦戦を強いられました。結局指導医の先生方にサポートしていただいて、何とか乗り切ることができました。英語を読むのと聞くのは全く別物で、単語の連なりとして「音のセット」をたくさん覚えないとnativeの話すスピードについていけないと感じました。

恥ずかしながら英語のスピーチをおそらく半分も理解でませんでしたが、3日間参加して特に印象的だった講演は「Emery A. Rovenstine Memorial Lecture: Demonstrating ASA's Leadership by Enhancing Our Relationships: How We Can Do DEI Better」です。学会では少数派である黒人として活躍してきたClaude Brunson医師が、多民族国家の米国が抱える人種問題に切り込み、ASAも多様性を取り入れて強固な人間関係を築くべきだと訴えました。その中で紹介された、Emery A. Rovenstine医師の言葉 "I realize that a new precedence must be set, new pathways explored, and new plays put into operation, if we are to eventually win.(勝利のためには、新しい先例を作り、新しい道を探り、新しいプレーを実行に移さなければならない。)"が印象的でした。この言葉のように新しいものを求める情熱や、それを取り入れる大胆さを持って、自身の知識や技術をアップデートし続けたいと思います。

企業の展示ブースでは、硬膜外麻酔の機器に興味を引かれました。1つ目はTuohy針の刺入点を決めたり、エコーガイド下に穿刺(傍正中法のみ)をするためのプローベでした。エコー画像をもとに手元のモニターに椎骨の図が表示されるので、初学者も使いやすいと思いました。2つ目は、Tuohy針やカテーテルの先端の位置を確認する装置です。針先の圧を音の高さで表示するため、手技中は手元から目を離す必要がありません。またカテーテルが硬膜外腔にあると血管の拍動が圧の変化として現れることを利用して、事故抜去していないかを確認することができます。術後疼痛管理において、カテーテルを入れ替えるべきかを判断しやすくなるのではないかと考えました。

最後になりますが、熱心にご指導くだいました、植田先生、杉山先生をはじめ、当院麻酔科の先生方、また学会参加を快諾してくださいました手術部の関係者のみなさまには厚く御礼申し上げます。

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亀田総合病院 麻酔科 栁 俊文

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療