亀田メディカルセンター｜亀田総合病院　麻酔科

Prophylactic Penehyclidine Inhalation for Prevention of Postoperative Pulmonary Complications in High-risk Patients: A Double-blind Randomized Trial.
Anesthesiology. 2022 Apr 1;136(4):551-566.

【背景】
術後呼吸器合併症(postoperative pulmonary complication : PPC)は術後の死亡・合併 症、在院日数の長期化を引き起こす主たる原因で、PPC発生率を予測するスコアリングとしてAssess Respiratory Risk in Surgical Patients in Catalonia score(ARISCAT score)がある。
本研究ではARISCAT score評価したPPC高リスク患者において周術期のpenehyclidine(長時間作用性選択的抗コリン薬)吸入を行うことによる術後30日間のPPCの複合アウトカムを評価した単施設二重盲検化ランダム化比較試験である。

【概要】
P:「上腹部手術」または「心臓以外の胸部手術」を受けるARISCAT scoreが45点以上の患者
I:予防的に周術期にpenehyclidineの吸入を行う
C:placeboの吸入を行う
O:術後30日以内のPPCの複合アウトカム

【結論】
上腹部や心臓以外の胸部の手術を受ける、ARISCAT score45点以上の PPC高リスク患者において、周術期のpenehyclidine予防的吸入により、 有害事象を増加させることなくPPCの発生率が有意に減少した。(NNT13.3)

【議論】
本研究では抗コリン薬として中国でのみ採用されているpenehyclidineを用いていることから、外的妥当性には疑問が残る結果であった。より一般的な抗コリン薬としてtiotropiumなどがあるため日本国内を含めた外的妥当性のある今後の研究が期待される。また、本研究のようにすぐには臨床に活かすことができない研究であっても研究デザインなど学べき点がたくさんあるという議論も出ました。

内村先生の発表は初期研修医とは思えない堂々とした発表でした。発表内容やスライド構成に関しても聴衆の理解や興味が追いつく内容で、専攻医としても大変勉強になる素晴らしい発表でした。

亀田総合病院 麻酔科 専攻医 1年目 竹下